ソニー 盛田昭夫―――“時代の才能”を本気にさせたリーダー

6月 5th, 2016 | Posted by admin in 長橋のつぶやき

 「ソニー 盛田昭夫―――“時代の才能”を本気にさせたリーダー」(森健二著 ダイヤモンド社)を読みました。自分は、直接、彼の謦咳に接したことはありませんが、知り合いには何人か彼と接した方がいて、かつ、彼の著書「MADE IN JAPAN」、「学歴不要論」も読みなかで、グローバルリーダーとしての彼を心から尊敬しています。

 で、この本、500ページくらいある本だけど、一気に読めました。とくに、一人称だと自分の話になるし、かといって、ソニーの話だと、会社の話になるし。一方で、この本は、盛田昭夫、ソニー、そして、ソニーのプロダクトがフェアに書かれていると思います。強いて言えば、コロンビアピクチャーズの買収の話とその後が、わりとサラッと書かれているような。まあでも、トランジスタラジオ、トリニトロン、ベータ、ソニーの主要プロダクトの歴史がとてもよくわかります。そういう点で、今年読んだ本では、「小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの」に優るとも劣らないと思います。

 で、順不同に思ったこと。まず、自分にとって刺さったのは、スーパーCFOとしての盛田昭夫。いまでこそ、ソニーは、日本あるいは世界に名だたるメーカーだけど、創業してからずっと、どうやって開発資金を捻出するかが課題で、彼はその資金を捻出するCFO的な役割を担っていた。具体的には、ニューヨーク証券取引所で日本企業ではじめてADR(米国預託証券)を発行(1961年)、日本企業初の完全時価発行増資(1970年)、そして、日本企業で初めてニューヨーク証券取引所への上場(1970年)、さらには、資金繰りに苦労したくないという思いからソニープルデンシャル生命の設立など、誰もやったことのないフロンティアに挑戦し、事業戦略と財務戦略を結び付けるスーパーCFOとしてソニーの土台を作ったと。日々、自分もいろいろな資金調達で苦しむ中で、この本から勇気をもらいました。

 もう一つは、物事の本質を理解して、それを相手の波長に合わせて説明すること。もともと、物理を勉強して、恩師から「物の理」を探求する物理の方法論を学んだことが、彼の経営の基礎になっていると。だから、誰もやったことのないファイナンス、ベータマックス訴訟、CBSとの合弁、など物事の本質を理解して、それを相手の波長にあわせて説明する、これが彼のグローバル展開の基礎になっていると。

 でも、これって、単にソニーだけの話ではなくて、裸一貫から作ったベンチャーがどう大きくなって、そして、大きくなったあと、彼は「自家中毒」という言葉で、会社が大きくなって衰退するのは、外部環境ではなく、自家(社内)に要因があると看破、事実、ソニーも何度もこの問題に直面している。というわけで、これから会社を作る、もしくは、会社に携わっている人全般におススメです。 

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