虎にならない方法

2月 11th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき

 ここ1か月くらいに読んだ中で出色の出来だと思いました。タイトルは、「多様性の科学」、致命的な失敗を未然に向付け、生産性を高める組織改革を全てがここにある、です。

 この致命的な失敗の一つが、20年前の9・11テロ攻撃の際、CIAの分析官は、アルカイダがテロを計画しているという事前情報が何度もありながらも、「テロが起きるはずがない」と一蹴、世紀のミスジャッジともいわれている事象です。とはいえ、CIAの分析官がダメなわけではなく、白人男性、アイビーリーグ出身、成績優秀者のみを選抜した結果として多様性がない画一的な組織になってしまい、アルカイダの活動という点とテロという点をつなげることができなかったと。

 最近は、だいぶ減りましたが、会社でもありますよね。たとえば、だいたい同じような高校・大学の新卒を雇って、教育をして、現場で営業して、はや数十年となると、良くも悪くも考え方が画一化するように思います。やはり、致命的な失敗を未然に防ぎ、組織の生産性を高めるには、多様性が必要というのは尤だと思います。

 そして、これは組織的な話もありますが、個人の考え方もあるのかなとも思います。たとえば、「なぜルート128はシリコンバレーになれなかったのか?」ルート128は、ボストン近郊の幹線で当時の盟主はDEC、今ではほとんど見ることはないですが、1970年代のオフコンVAXとか世界のコンピューターを支配していました、ちなみに、自分が大学生のころ、DECのワークステーション使ってました、たぶん、DEC最後世代だと思われます。

さて、このDEC、秘密主義で知られ、自社内でも秘密を貫き通し、外部との交流はほとんどなかったといいます。一方、シリコンバレーは、対極のカルチャーで、エンジニアは仕事帰りにバーに集い、交流し、解決の糸口をさぐり、「情報の水平伝播」によって世界最大のIT産業地帯になったと。エートスというかそういう雰囲気がシリコンバレーにあったのかもしれないですが、これは個人の考え方もありますよね。

 で、もう一つ、国語の教科書にだいたい載っている中島敦の「山月記」、主人公李徴は、才気溢れた官僚でしたが、傲慢ゆえに、一官僚に甘んじるわけにいかずと、一人籠って詩作に専念します、いまでいうとフリーランス転向でしょうか。が詩作に、専念するも一向に上達せず、また、官僚に戻るも、同輩は遥か先に出世し、後輩に使われ、そして、己の自尊心を大いに傷つけられ、その後、行方がわからなくなります。

で、同輩がたまたま虎となった李徴と出会い、李徴は、自尊心・プライドの高さが己を「虎」にしたと後悔します。まあ、もちろん、虎は比喩ですが、どんな環境であろうと、自分の殻に閉じこもるのではなく、つまらないプライドは捨てて、外部と交流すべし、でないと「虎」になってしまうと笑

 自分もここ2年くらいコロナ禍で外部との交流が少なくなり、仕方ないなぁ、と思ってはいましたが、もしかしたらこれは自分の殻に閉じこもる「虎」化への一歩かもしれません汗、というわけで、コロナ禍なりにも、虎にならないように、外部との交流をもう少し増やせたらとも思わせるよい本でした。

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