広まる”ロケーション・モバイル”

6月 30th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー - (広まる”ロケーション・モバイル” はコメントを受け付けていません)

ビジネス・インサイダーに面白い記事があったので、紹介。

タイトルは、Why Local-Mobile Marketing Is Explodingで、さしずめ、日本語に訳せば、拡大するローカル・モバイルマーケティングといったところだろうか。

ローカル・モバイルとは?

そもそも、ローカル・モバイルとは、”geo-aware” 、あるいは、”geo-fenced”なども称され、要するに、定額パケットスマホが普及すると、位置情報と組み合わせたいろいろなサービスが提供できる。たとえば、Googleでは、スマホで”ピザ屋”と検索すると、自分の居場所から最も近いピザ屋を検索して、表示してくれたりする。言ってみれば、スマホを軸としたネットとリアルの融合といったところだろう。

拡大するローカル・モバイル

日本でも、このローカル・モバイル、だいぶ利用するところが増えてきたけど、USでは、かなり拡大しつつあるという。この記事を要約すると以下、

  • 位置情報は、新しい”Cookie”:モバイルの場合、サードパーティのクッキーが取り扱えない場合が多い。そこで、位置情報を新しいクッキー代わりに利用する。位置情報をグルーピングして、効果的なキャンペーンを展開する。
  • 企業はローカル・モバイルに投資を加速:Balihooの調査によると、400ブランドの経営者は、ローカル・モバイルの投資を増やそうとしている。Berg Insightによると、現在、ローカル・モバイルはモバイル広告全体の8%に過ぎないものの、2017年には33%まで増やすという。
  • ローカル・モバイルはコンバージョンレートが高い:モバイル広告全体のクリックスルーレート(CTR、表示された広告のうちクリックすう確率)は、0.4%という。一方で、Verdeによれば、ローカル・モバイルの場合、CTRは倍になるという。
  • ローカル・モバイルはスマホに特化した技術でない:ローカル・モバイルは、スマホだけに限らず、タブレットなど他のデバイスにも応用できる。とくに、最近、ショッピングプロセスを通じて、スマホ・タブレットの果たす割合(スマホで検索して商品を買うなど)があがっている。スマホ・タブレットの”ファーストサーチ”としてのローカル・モバイルは重要。

ローカル・モバイルのメリット・デメリット

すべてをうのみにできないけど、これはだいたいあっていると思う。とくに、CTRの改善について、やはり、ユーザが検索するのは当たり前だけど”必要な情報が欲しいから”、そして、”ロケーション”というコンテクストが加わることによって、ユーザにとってより有用な情報になる可能性は高いと思う。たとえば、自分が近くにATMがないかなと思って、スマホ・タブレットでATMと検索する、そして、位置情報をもとに一番近くのATMを教えてくれたら、それはやっぱり便利だ。

 一方で便利な反面、やっぱり、個人情報の話は避けて通れないだろう。位置情報をクッキーのように扱うのはとても合理的なやりかただと思う。でも、それが万が一、流出したら、その被害は大きい。という意味で、言うまでもなく、厳重な管理が必要だと思う。

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 スマートフォンにおいてどう位置情報をビジネスに活かすか、という点については、去年上梓させていただきました「図解スマートフォンビジネスモデル 事業戦略と収益構造」の第4章 位置情報を活用したスマートフォンビジネスモデル において触れておりますので、ぜひ、ご参照ください。

また、スマートフォン・タブレットが今度増えるとどうなる?という話では、先週オープンした個人投資家向け投資アイデアプラットフォーム”Longine”に、「次のスマホ」と「スマホの次」:恩恵を受けるのは誰か? パート1として書かせていただきました。1記事ごと、月額とも有料ですが、こちらも、ぜひご参照ください。

Facebook HOMEをアンインストールした理由

5月 31st, 2013 | Posted by admin in テクノロジー - (Facebook HOMEをアンインストールした理由 はコメントを受け付けていません)

Facebook HOMEというアプリがある。このアプリがリリースされる前は、”Facebook Phone”とも言われていて、フタを開けてみると、”HOME”としてスマホをFacebook化するアプリが2013年4月にリリースされた。

自分もワケあって2カ月近くNexus7にインストールして、使ってみたけど、結論からいえば、イケてない。

なぜ、イケてないか? おそらく、それは自分のデジタルライフの中のFacebookに占める割合が低いからだと思う。

ざっくり言って、自分のデジタルライフ(=PC,スマホ、タブレットでネットを使う時間)は、30%:ウェブ(ブログ、ニュース、まとめサイトなど)、30%:メール・チャット、15%:動画、10%:Facebook、15%:その他、で、だいたいFacebookは1割くらいの比重でしかない。おそらく、これは今後も変わらないか、もしくは、また別のSNSが出てくれば、その割合は下がると思う。

一方、Facebook HOMEのアプローチは、スマホ・タブレットの”Facebook化”で、ホーム画面から何から何まですべてFacebookが中心となる。おそらく、デジタルライフのうち、Facebookの占める割合が50%以上であれば、そこそこ使えると思う。だけど、自分の場合、Facebook Messangerは使うけど、あくまでも、メールはGmailを使っているし、ウェブ閲覧もRSSリーダーとかFacebook以外のモノを使っているので、すべてを”Facebook化”されて、それ以外のアプリへの移動(使ってみるとわかるんだけど、Facebook HOMEでは他のアプリに移動するのが結構手間がかかる)に手間がかかるのでは、やっぱり、使いにくい。

かつて、3つのイノベーションで“復活”するフェイスブック、その収益力は本物か?にも書いたように、自分はFacebookのとくにモバイル領域でマネタイズする姿勢は、広告が多くてうざいと言われようが、正しい方向性だし、他の企業にとっても、このモバイルのマネタイズ化は学ぶところが多いと思う。たしかに、Facebook HOMEはイケてない、だからといって、Facebookは終わったというわけではない。むしろ、失敗を重ねて、さらに良くする(少なくとも他のアプリのとの連携ができれば、少しは使いやすくなると思う)、今後のFacebookの展開が楽しみです。

アンバンドリングというフレームワーク

4月 21st, 2013 | Posted by admin in イノベーション | 経営 - (アンバンドリングというフレームワーク はコメントを受け付けていません)

いつもモノを考えるとき、フレームワークという考え方を使って考えることが多いです。
フレームワークの意味は”枠組み”、ある物事を枠に当てはめてみると、その物事がよりよく理解できるという話。
もちろん、枠に当てはまらないモノもあるけど、だからといって、フレームワークが使えないという話でもない。
そして、自分がいつも使っているフレームワークが、”アンバンダリング”という考え方です。

アンバンダリングとは

 アンバンダリングとは、マッキンゼーのコンサルタントジョン・ヘーゲル三世の提唱した概念で、世の中のすべてのビジネスは1.製品イノベーション、2.カスタマーリレーション(顧客管理)、3.インフラ管理、の3つに分別することができ、それぞれをごっちゃまぜにすると結局誰をターゲットにした製品・サービスかわからなくなるので、”アンバンダリング”(分離)すべしという言説。

簡単に言うと、”お客様は神様です”という2.カスタマーリレーションのビジネスモデルを標榜しながらも、”これからエッジのある製品を出したい”という1.製品イノベーションのビジネスモデルは確実に同居しない。”お客様は神様です”のビジネスモデルは、お客様のよろこぶサービスを、お客様に併せて提供することであり、それと”エッジのある製品”とはよほどのことがないかぎり重なることはない。それで、3つのビジネスモデルの特徴は以下。

1.製品イノベーション

魅力的な新製品や新サービスを提案して、それをマーケットに送りだすこと。たとえば、アプリ開発は、“こんなアイデア面白い”というアイデア勝負のところがあって、このアイデアは、顧客管理業務から生み出されるというよりも、むしろ、個々の開発者のひらめき、センスに負うところが大きい。成功要因は、スピード、できるだけ早くマーケットに出すこと。

2.顧客管理

顧客を見つけ出して、この顧客とリレーションシップ(関係)を築き上げること。たとえば、ウェブサイトで何かしらの製品資料をダウンロードする場合、たいていの場合、連絡先を要求される。これは入力された連絡先に定期的にコンタクトすることによって、顧客とのリレーションシップを築こうとする目的があるから。成功要因は、スコープ、顧客に気に入った製品を提供するためには、顧客の興味を絞る(スコープ)必要がある。

3.インフラ管理

すでに製品があり、顧客もついているビジネスにおいて、そのビジネスを安定的に運用すべく、製品の流通、在庫管理などのロジスティクスなどの設備を構築し、管理すること。成功要因は、スケール、すなわち、規模を拡大し、1単位当たりのコストを抑えること。

アンバンダリングと中小企業

このアンバンダリング、大企業だけの問題かといえば、自分の経験でいえば、小さい企業もかなり同じことが当てはまると思う。たとえば、これまでお客様は神様ですとばかりに2.顧客管理を提供していたものの、これからはグローバルにプラットフォームを展開するということで3.インフラ管理に転換しようとすると、とんでもないコストがかって事業として成り立たないというのはよくある話。(ただ、それで事業として成立するかしないかは、マネジメントの胆力だと思う、ただ、両方を満足することはできないので、取捨選択は必要)

スマートフォンビジネスモデル

 というわけで、自分はこのアンバンダリングというフレームワークでビジネスをまず考えます、そして、スマートフォン業界において、このアンバンダリングという視点から整理したのが、去年上梓させていただいた「スマートフォンビジネスモデル」です。よろしかったら、ご笑覧ください。

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長橋 賢吾

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