データサイエンス超入門 ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方

12月 15th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー | プログラミングを考える | 経営 - (データサイエンス超入門 ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方 はコメントを受け付けていません)

日経BP田島様よりご献本いただきました、ありがとうございました。

最近、いたるところで耳にする「データサイエンス」あるいは「データサイエンティスト」について解説した一冊。

もともと、統計自体は、何十年も前からビジネスに活用されてきており、今さら、統計という話ではない。では、なぜ、”今”なのか?

やはり、ソーシャル、M2M、ウェブなど、様々なデジタル情報が爆発的に増加、くわえて、本書では、データ処理基盤の進歩、使えるデータの整備、人材育成の動きにより、「データ活用のチャンスがより多くの企業に訪れる」(p26)だからこそ、確率論に基づいた統計のスキルが更に重要になると。

とはいうものの、単に、学校の授業の統計解析をマスターできれば良いという話ではない。むしろ、筆者が主張するのは、「膨大なデータを見極めて、目的を達成するための意思決定に役立つ気付きをえる「目利き力」」(p38)が重要と指摘する。そして、その目利き力は

1.データを活用したビジネスを活用する力
2.データサイエンスを支える統計知識
3.アナリティクスを実現するITスキル

の3つが必要と説く。

自分も統計を活用(本書でいえば、正規分布くらいまでは使うけど、機械学習まで及びません。。)することがあり、つくづく思うのは会社によってデータを活用しようという姿勢が全然違うこと。「分析力を武器とする企業」(トーマス・H・ダベンポート)では、企業の分析力にはステージに分かれていると説いているように、Excelの四則演算で十分な会社もあれば、SPSS等を利用して、高度な統計手法を駆使している会社もある。

そういう意味で、本書で指摘している「筆者は企業経営層の方々に「データサイエンティストとは何者か」と聞かれたら、まずは「データサイエンスという言葉の定義を合わせましょう」と回答するように心がけている。」(p242)という主張は尤もだと思う。

Excel、SPSS、いずれも共通しているのは、やはり、データ・数字をもとにビジネスを展開すること、そして、他社にまねできないビジネスを展開すること(イノベーション)。そして、イノベーションを生むには、本書では次の3つが必要と説く。(p228)

1.適当な解で満足してはいけない
2.普遍的だと思われている事象であっても漫然と処理してはいけない
3.妥協せずやり抜く

自分が思うに、データはモノごとの状態を客観的に提示してくれるものだと思う。たとえば、甘いだけだとわからないけど、糖度10%といえば、客観的に提示しているといった類だ。そして、 当たり前と思われていることをも漫然と処理せず、データに即して検証することでイノベーションは生まれるのかもしれない。そして、日本からもデータサイエンスを通じてたくさんのイノベーションが生まれたらこれほど素晴らしいことはないと思う。

本書は、データを活用したビジネス、統計の基礎、アナリティクスを実現するITスキルがコンパクトにまとめられており、そして、それを使ってどうイノベーションを誘発するか、を考えさせられるよいヒントになりました。

データサイエンス超入門 ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方 データサイエンス超入門 ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方
(2013/11/07)
工藤卓哉、保科学世 他

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分析力を武器とする企業 分析力を武器とする企業
(2008/07/24)
トーマス・H・ダベンポート、ジェーン・G・ハリス 他

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グルーポンとロケーション・モバイル

6月 30th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | テクノロジー - (グルーポンとロケーション・モバイル はコメントを受け付けていません)

前のエントリーでロケーション・モバイルが広がっていることを紹介したけど、もうひとつ最近思っていること。

それは、最近のグルーポン、英語版のグルーポンのメールを毎日受け取っているけど、たとえば、IT University Online – Online Deal(MSオフィスのトレーニングコース)のように、一回受けたら終わりのモノが多い。

これって、もともとのグルーポンの思想と違ってないか?というのが、最近、思っていること。

自分の理解では、グルーポンのもともとの思想は、”ローカルのプラットフォーム”、近くのレストランのクーポンをグルーポンのサイトで購入し、最初は割安で試せるけど、次からは常連となって、そのレストランの長期の収益に貢献する。グルーポンとしては、グルーポンでクーポンを購入する顧客にとっては、”近くにいい店を発見した、今後、友達を連れていってみよう”と次のきっかけになり、レストランとしても、新規顧客開拓になり、そして、グルーポンとしてもクーポンを購入してもらえるので、全員ハッピーになれる、理想的なビジネスモデルのように見える。そして、この”ロケーション・モバイル”という文脈からは、グルーポンほどふさわしいプラットフォームがないように見える。

でも、実際、グルーポンは、たしかに、地域にあわせたクーポンもあるけど、やはり、”1回きり”が多いようにみえる。

自分の理解では、結局のところ、グルーポンは“安売り”だからだと思う。安売り自体は全然悪くない、むしろ、同じもので値段が安ければ当然安い方を買うべきだと思う。

でも、グルーポンに掲載されているモノは、すべて安いとなると話は別だ。

レストランの場合、最初は安いかもしれないけど、次にいったら同じ値段で提供できるわけではない。安さだけを求めたら、顧客サイドとしても、”高いなあ”と思ってしまう。

そして、レストランとしても、ファミリーレストランのようなチェーン店は別だけど、”ウチは安いから来てほしい”と思うレストランはそれほどないはずだ。そして、安くしようとしたら、規模を拡大して、仕入れコストを安くするみたいな話になるので、結局のところ、ファミリーレストランに収斂すると思う。

そう考えるとグルーポンという仕組み、”安い”を目当てに購入する顧客・運営サイドと、安い以上のモノを求める店舗サイドとの間にギャップがあるように思う。だから、オフィス講座のような”1回きり”もしくは”在庫処分セール”が主流になるんじゃないかと。それはそれで、クーポンサイトの一つの歩む道かもしれない。

CIOはいらない?CDO(Chief Digital Officer)の興隆?

3月 17th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | 経営 - (CIOはいらない?CDO(Chief Digital Officer)の興隆? はコメントを受け付けていません)

自分自身もCIO代行のような立場で企業の情報システムのコスト分析・提案をするので、CIO(Chief Information Officer、最高情報管理責任者)はどうあるべきか、については折に触れて考えることがあります。

そして、この記事、結構、大胆にCIOは使い物にならないので、CDO(Chief Digital Offier、金融の人にとって良い思い出がない略語かもしれない)を登用すべきだと主張する。

なぜ、CIOが使いものならないのか。この記事によれば、その理由は2つ。まず一つは、CIOは、Exchange(メールサーバ)、SAP(企業の財務・販売などの基幹システムパッケージ)の知識はあっても、デジタルマーケティング、ビックデータ、ソーシャルネットワーキングなど、経営が”攻め”に活用する知識・経験がない。2つ目として、CIOの役割は、情報システムをちゃんと動かすこと。したがって、何か会社でチャレンジをやろうとして、少しでも情報システムを変更することがあれば、CIOはそのリスクを取りたがらない。すなわち、もし、そのプロジェクトが失敗すると、CIOの評判に傷がつくので、できるだけだけそのリスクを避けるように行動する。とはいうものの、最近の企業活動において,デジタルマーケティング(ネット広告など)は切っても切り離せなくなってきている、だから、IT部門でないところから、CDO(最高デジタル責任者)を登用すべきという主張だ。

自分としては、例外を除いて、だいたいこの主張に同意できる。例外とは、CIOがいなくてはいけない業種。そのわかりやすい例は、銀行を含めた金融。金融が扱っているのは、つまるところ、おカネという情報、なので、すべてのやりとりは情報システム経由で行われる。だからこそ、情報システムは、止まってはいけない。ちょっと前の話では、三菱UFJ銀行元頭取の畔柳氏は、旧三菱銀行と旧東京銀行の情報システム部門統合を総轄し、その経験から、UFJ銀行とのシステム統合もトップダウンで実行したのは、業界ではよく知られている話。こうした情報システムが企業の生死に関わる業界であれば、CIOを取っ払って、CDOにせよ、というのはナンセンスだろう。

だからといって、すべての業界でCIOが必要というわけではない。逆に言えば、金融以外について、CIOががっちり情報システムを守るという会社は、よほどの大企業以外はなくなりつつあると思う。むしろ、”止まらないように情報システムを守る”というCIOアプローチよりは、”リスクを冒してでも、デジタル分野を開拓する”というCDOアプローチの方が、企業価値を上げる手段としては有効だと思う。

今日、明日にCIOがなくなって、CDOにリプレースされるということはない。でも、長い目でみると、”情報システムのおもり”は重要だけど、それだけだと、生み出す価値も限定的だと思う。だからこそ、CDOよりな、デジタルを使ってビジネスを生み出すアプローチが情報システムにとっても重要だと思うわけでした。