爆速経営―新生ヤフーの500日

12月 15th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (爆速経営―新生ヤフーの500日 はコメントを受け付けていません)

レビュープラス様より、「爆速経営―新生ヤフーの500日」を頂きました。ありがとうございます。

自分の経験から言うと、組織を変えるのはすごく難しい。

とくに、規模が大きくなればなるほど、大規模に組織を変えようとすると、それに反対する抵抗勢力がでてくる。そして、その抵抗勢力との間で妥協すると、結局、骨抜きになって何も変わらない。こういうシチュエーションをよく見てきました。

では、どうやって組織を変えるか?

この本にはこのヒントがあると思う。

 まず、トップが決断する、決断するのは、ソフトバンクの孫社長、彼が主宰する社内大学「ソフトバンクアカデミア」で、あるヤフーの元社員で受講生がヤフーを「MOTTAINAI」(もったいない)と主張。それはヤフーは、インターネットについては日本一の会社であるものの、「スピード感の欠如、過度なリスク回避志向、そして、組織の風通しの悪さ。症状だけから判断すれば、ヤフーは典型的な「大企業病」だ。」(p38)。そして、孫社長は、宮坂氏をトップとしてヤフーの経営体制を変えことを決める。

 新しい体制で何を変えるか、まず、新生ヤフーの理念を「僕らは課題解決エンジンを目指し、何よりもユーザーファーストを考える」(p82)として決める。その理念を「大企業病」である組織全般に伝えるのは難しい。彼の言葉を借りれば、

「何だろう、『王様は裸だ』という感じですよ、ある種。普通、改革者って浮くわけですよ。周りから何だあいつ、ばかじゃねえとかいわれるわけですね。疲れますからね、リーダーシップって。(p84)

これもわかるなあ、たとえ、社長であっても、全然違う方針を打ち出せば、やはり、”浮いてしまう”、でも、最初は浮くかもしれないけど、積み重ねるうちに徐々にフォローする人が増えてくる。そして、ユーザファースト、課題解決という理念をもとに、201x年までに営業利益を2倍にすべく、1.オンリーワン、2.異業種最強タッグ、3.未踏領域への挑戦、という3つの戦略を打ち出す。

 その後の、ヤフーの快進撃については、あえて、ここで説明する必要はないでしょう。ユーザを第一にして、早く意思決定をする、名実ともにヤフーは爆速経営の会社になりつつあると思う。

 そういう意味で、この本は、”サクセスストーリー”ともいえる。で、サクセスストーリーと冒頭の組織改革できない会社の違いは何か?おそらく二つあると思う。一つは、トップの意思、ヤフーでいえば、孫社長の危機感ともいえる。そして、もう一つは、宮坂氏の情熱。ヤフーを変えたいという気持ちがなければ、”浮いたまま”になってしまう。最初は、”浮いている”けれども、情熱をもって、まわりに接することで、どんどん社内にフォロワーを増やす、この2つなんだろうと思う。

 EC無料化のところについては、現在起きている事象なので、なかなか書きにくいところもあろうと思いますが、基本的にこの”組織改革”がちゃんと書かれていて、良い本だと思いました。

爆速経営 新生ヤフーの500日 爆速経営 新生ヤフーの500日
(2013/11/07)
蛯谷 敏

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オフィス移転・自社ビルで業績が落ちるのはなぜ?

10月 31st, 2013 | Posted by admin in 経営 - (オフィス移転・自社ビルで業績が落ちるのはなぜ? はコメントを受け付けていません)

Facebookに投稿したら、いろいろな有益なコメントをいただけたので、まとめてみました。

はじめに、これは、一般的な話であって、特定の企業の話ではありません。

アナリストのとき、不思議に思っていたこと。それは、ある企業が、最新鋭の豪華なオフィス、あるいは、立派な自社ビルを建てると業績が落ちる会社が多いこと、もちろん、例外はあります。

一般的には、良いオフィスに引っ越す→社員の士気があがる→それに従って業績も伸びる、と考えられるのだけど、意外と業績が落ちる企業があって、いままで不思議に思ってました。

それで、最近、思っているのは、これって謙虚さの問題なのではないかと。

結局のところ、ビジネスは泥臭い。どんな企業であっても、1円でも多く稼ぐために、お客さんが喜んでもらえるように工夫して、期待に応えるように精一杯尽くす。そして、次のオーダーがもらえるように、お客さんに粘って、這いつくばる。まさに、事件は現場で起こっているのであって、会議室では起きていない。やっぱり、泥臭くないビジネスはあり得ない。

で、自分の仮説では、豪華なオフィス、立派な自社ビルに移ると、”俺たちはすごい”とばかりに、こうしたお客さんのために粘って、這いつくばる姿勢が、知らず知らずのうちに失われるのではないかと。そして、その積み重ねが業績の悪化につながると。

という意味では、オフィス移転、自社ビルを建てることは悪いことではなく、むしろ、たとえ豪華なオフィスに移転したとしても、”常にお客さんに尽くす謙虚な心”、をキープするほうが重要なのかもしれない。

まあ、システム開発のような、お客さんとの接点がそれほど多くない職種の場合は、なかなか難しいところもあるかもしれないけど、やはり、マネジメントの気持ちの持ち様ともいえるかもしれない。

それで思い出したのが、最近、読み返した稲盛さんの本。こんな一節があって、目から鱗が落ちました。彼は、”会社というものはトップの器以上には大きくならない”として、ではどうやってトップの人格を高めるかについて、こう指摘する

 そこで私は、「人のために尽くす」ということを経営の基本におき、人格を磨かれたら良いと思います。たった一回しかない人生です。その人生を二十数店舗、売上わずか20数億円で終えるより、「同じ一生なら、もっと多くの人から喜ばれるよう経営してみよう」と思い、経営するのです。
 実は、人間が一番強くなるのは、執着から解脱した時なのです。「儲けたい」、「偉くなりたい」、これはみな欲望です。もちろん、この執着、欲望から完全に抜け出すのは無理ですが、「人を喜ばすために」と考えれば、その分我良くが引っ込みます。心が高まっていくのは、実はここからなのです。 「新版・実践経営問答 こうして会社を強くする」 稲森和夫 盛和塾事務局(編)p31

儲けたい、偉くなりたい、豪華なオフィスに引っ越したい、誰にだって欲望はある。だけど、その欲望のまま突っ走ることが、お客さんの満足とは限らない。だからこそ、お客さんのために尽くす謙虚な心が大切と思いました。

Jリーグの経営学 2015年からのJリーグはどうなる?

10月 26th, 2013 | Posted by admin in Jリーグの経営学 | 経営 - (Jリーグの経営学 2015年からのJリーグはどうなる? はコメントを受け付けていません)

先日投稿した横浜マリノスにみるJリーグの経営学に続いて、会社の経営戦略を普段考えている人間からビジネスとしてJリーグがどのように映るのか、第2弾です。今回は、2015年から導入されるJリーグの新しい制度についてです。

2015年から何が変わるのか?

今のJリーグ運営方式は、1年を通じて、18チームによるホーム&アウェー交互に34試合することで、最も勝ち点が多いチームが優勝。
一方、2015年からは、2015シーズン以降のJ1リーグ戦大会方式についてによれば以下、

■大会方式
18クラブによる2ステージ制リーグ戦および、スーパーステージとチャンピオンシップ。
〔リーグ戦〕
 各ステージ1回戦総当たりのリーグ戦。
両ステージでホーム&アウェイとなる
各ステージ17節、153試合(両ステージ合計306試合)
年間勝点1位のクラブはチャンピオンシップへ、各ステージ1位、2位クラブはスーパーステージに進出する

と、一番大きな変更は1ステージ制から2ステージ制に変更、そして、1.各ステージ上位2チームによるトーナメント戦スーパーステージ、2.年間勝点1位のクラブと、スーパーステージの勝利クラブによるチャンピオンシップがあわせて加わる。

2ステージ制によるインパクトは?

 Jリーグニュースによれば、

Jリーグは今回の変更によって、地上波のテレビ放送を含めた露出の拡大、全体収益の10億円以上の増加、新たなファンの獲得を想定している。

 増収10億円分の具体的な開示はないものの、少なくとも、2リーグ+スーパーステージ、チャンピオンシップによって、10億円の増収効果があると指摘。


2リーグ制は妥当な戦略か

この制度変更の目的は、いままでの1リーグ制を2リーグ制にすることで、ファンを増やす、テレビ中継の数を増やすことと思われる。
これはあえてたとえて言うならば、会社の決算に近いかもしれない。日本の上場企業の場合、年に4回決算を開示することが義務付けられている。
なので、上場企業にとっては3カ月ごとに決算を開示しなくてはいけないので大変だけど、その決算をビジネスにする会社がある。
その典型例は、証券会社。証券会社のビジネスは、いろいろあるけど、基本は投資家から株式の注文を取り次いで、売買を成立させる。そして、その出来高に応じて手数料を徴収するモデル。なので、売買高が多いとそれだけ手数料を多く徴収することができる。そして、会社の決算は、売買高を増やす意味では重要なファクター。
たとえば、ある会社が、決算で予想(コンセンサス)以上によい決算を出した場合、投資家はその流れに乗ろうということで、株を買う→売買高が増えると。

Jリーグにおいてもこのアナロジーは比較的当てはまるかもしれない。これまでのやりかたは1年に1回”決算”する方式、そして、2015年のやり方は1年に2回”決算”をするというやりかたと言えるかもしれない。そして、1年に2回決算をすることで、見せ場が増える、あるいは、”ウチのチーム、いままで、ずっと弱かったけど、次はかなり喰いこんできて、もしかしたら、優勝できるかもしれない”ということであれば、応援に俄然力が入る、それによって、離れたファンを戻すいいきっかけになるかもしれない。そういう意味では、1年に2回にすることは、妥当な戦略と言えそうだ。

2リーグ制のデメリットは?


一方、デメリットについては、サッカーキングによる記事J1が2015年より2ステージ制移行…そのメリット、デメリットとは?がよくまとまっていて、デメリットは、

1.1チームが両ステージ制覇の場合、どうするんだ問題
2.欧米のスタンダードではない問題
3.過密スケジュール問題
4.年間勝ち点1位のチームが日本一とは限らない問題

といったところだろう。

結論は?


 デメリットであげた不公平感、両ステージ制覇問題など、難しい問題はあるにせよ、2ステージ制は、決算のような”見せ場”を増やすという試みとして支持したい。
でも、結局のところ、”見せ場”が楽しめるかどうかは、やっぱり、人材、すなわち、日本に魅力的な選手がいるかどうかという点に尽きる。
企業においても、決算、業績の良しあしは、やっぱり、マネジメントと従業員によるところがほとんど、そして、よいマネジメントとよい従業員がいなければ、企業は存在しえない。
だからこそ、2015年の制度変更をきっかけに、日本のサッカーの人材の厚みが増すことを、1ファンとして強く望むところです。

ヤフー EC無料化にみるリーダーシップ

10月 9th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | 経営 - (ヤフー EC無料化にみるリーダーシップ はコメントを受け付けていません)

 ヤフー、EC無料化が発表されました。

 これはいろいろなところで論じられているので、多くを語る必要はないけど、自分はとても期待している、いままで、場所代を払わなければいけなかったものがタダになる。

 タダになることによって、いままでリーチできなかった人も、”ヤフーのECが無料だからやってみよう”という気になるだろうし、それによって、裾野が広がることはとても大切。一部には、消耗戦という見方もあるみたいだけど、下手に戦力の逐次投入をするよりは、一気呵成にシェアをとる方が兵法の理にかなっていると思う。

 さて、この話の本題、自分はむしろリーダーシップという点を評価したい。基本的に、こうした意思決定は、EC事業部にとっては、勘弁してほしい話だ。これまでの手数料の売上が激減してしまうため、トップセールスにしてみたら、これから何をよりどころにして売っていいか、わからなくなる。


 そして、会社のマネジメントとして、営業の力が強いマネジメントであれば、こうした決定はほぼ確実にしない。これ自体は普通の会社の意思決定なので、マネジメントがダメという話ではない。でも、それをあえて、取っ払って無料にしてしまう孫さんの実行力、リーダーシップだからこそできる話だろう。彼は、vodafoneのときも、6割勝てる見込みがあったので、買収したと言っていて、今回も同じ腹積もりなんだろう。

 それで思いだしたのは、GEの例。GEは、インダストリアル・インターネットにみるGEの経営力にも書いたように、いままでのハードウェア路線から、ソフトウェアもやろうとしている。

 もちろん、その意思決定にあたって、ハードウェア部門から反発もあったと思う、だけど、あえて、前に進むために、意思決定をした。もちろん、企業価値という観点からは、こうした意思決定は、最初は馬鹿げているかもしれないけど、あとあと、ターニングポイントになる場合が多い。もしかしがら、”馬鹿げた意思決定”こそ、世界を変えう上で重要なことかもしれない、と思いました。

 

 

「ロスジェネの逆襲」に見る半沢直樹の条件

9月 25th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (「ロスジェネの逆襲」に見る半沢直樹の条件 はコメントを受け付けていません)

いや~、半沢直樹のドラマ面白かったです。

この面白さを語るには、いまさら感があるけど、とにかく、面白かったです。

で、巷では、映画化のうわさもある、出向先の半沢直樹を描いた「ロスジェネの逆襲」をドラマの余韻が醒めぬまま、読みました。

これもやっぱり面白い、原作の方は、ドラマに比べると半沢直樹が若干マイルドになっていて、これをドラマにするとすごいことになるんだろうなぁと想像しながら、最後まで一気に読みました。

それで思ったこと、自分もいろいろな会社をみるチャンスがあるけど、どの会社にも半沢直樹に相当する社員はいると思う。もちろん、何も状況がわからないまま、”倍返し”をしても、会社の反発を買うだけだけど、倍返しが成立しうる環境もあるかなと。ロスジェネの逆襲(ドラマも同じ)だと、たぶん、以下の環境。


1.トップからの認知・理解
 これはすごく大事。どんな企業を問わず、トップの最大の特権は人事と報酬を決める権利。アメリカ型コーポレートガバナンスというなかで、人事を決める指名委員会、報酬を決める報酬委員会を設置する委員会設置型がある。でも、日本でなかなか普及しないのは、このトップの権限である人事と報酬を奪うものであり、なかなか普及が進まないのも、この強力な権限をトップが手放したくないというのもある。半沢直樹でいえば、このトップは、中野渡頭取、ドラマでは最後に子会社出向を命じるものの、頭取は”銀行を変える面白いやつ”という認識があるように思う。これは、他の会社でも結構あって、”皆に反対されたけど、社長だけ支持してくれて、プロジェクトを進めることができた”という話も結構多い。トップから認知・理解されること、これが一番重要だと思う。

2.同期の絆
 結局のところ、ビジネスの多くは、どれだけ情報を持っているかで決まる場合が多い。それで、自分の部署だけだと情報が限られていて、内部・外部を問わずいろいろな情報を収集することで、次の打ち手を決めなければならない。たとえば、そういう情報が入ってくるのは、タバコ部屋、自分はタバコを喫わないのだけど、たまにタバコ部屋にいくと、いろいろな情報が入ってくる。そして、部署が違う同期も”タバコ部屋”と同じ役割だと思う、半沢直樹でいえば、渡真利、近藤がこれに相当する。これも重要。

3.部下からの信頼
 「ロスジェネの逆襲」では、半沢の部下として働いた森山がこう回想する。

半沢は尊敬に値する上司だった。顧客を優先し、自らの地位さえ顧みない肝のすわった仕事ぶり。知恵と努力で相手を上回り、僅かな糸口から事態を逆転に導く手腕、。半沢と仕事ができたのは、森山の財産だ。(「ロスジェネの逆襲」 p363)

 これはドラマをみれば言わずもがな、でしょう。そして、ロスジェネの逆襲では、”ロスジェネ”の部下が、半沢の思いもよらない方法で、”逆襲”します。

この3つ、もちろん、トップからの認知・理解が一番重要だけど、それには同期・部下とのコミュニケーションも大切、そうした3つの当たり前があるからこそ、倍返しが成り立つのかもしれない。そして、ロスジェネの逆襲、映像化が楽しみです!

 

初年兵教育に学ぶリーダーシップ

8月 5th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (初年兵教育に学ぶリーダーシップ はコメントを受け付けていません)

先日、ある人がこんなことを言っていた。

「部下は、たくさんいると指揮しやすいんだけど、2~3人だと、ウェットになって大変なんだよね」

これは、自分にも経験があるけど、よくわかる。2~3人が仲良くやっていればいいけど、やっぱり、そうはいかない。うまくいかないときもある。

うまくいかないとき、上司はどうするか。これはこれで難しい問題だ。もちろん、もめごとがあれば、仲裁して、うまく方向づけるのが上司の仕事なんだろうけど、世の中、そんなに簡単にいくわけではない。大岡越前のように喧嘩両成敗みたくバッサリ成敗できればいいけど、全員が納得する仲裁は難しい。一人はハッピーかもしれないけど、もう一人は禍根を残すというのはよくある話。


そんな中、なるほどなあ、と思ったのが、瀬島龍三の回想録の話。瀬島龍三は、戦前・戦中は陸軍の大本営参謀として、太平洋戦争の作戦を立案し、戦後は、シベリア抑留をへて、伊藤忠商事副社長として、同社の発展の原動力となった人物。そして、彼が20歳そこそこで士官学校を卒業し、故郷の富山で初年兵の教官として教育にあたることになった。そして、最初にやること、それが初年兵およそ80名の名前、正確、学歴等の暗記という。

1月10日の入営前に、受け持ち初年兵一人一人の家庭状況、正確、学歴、職業、顔写真などを頭に入れて暗記しておく。入営して初めて初年兵と顔合わせしたとき、いきなり、教官の方から、「○○」と初年兵の名前を呼ぶ。呼ばれた初年兵は自分の名前が知られていることでハッと驚く。そして親近感が生まれる。これも一種の教育法だった。

瀬島龍三回想録 幾山河 p36

これって信頼なんだなあと。

やっぱり、上司となるひとが、「今日から自分はあなたの上司です」と言われて、常に上司面されて、威張られていたら、部下は信頼しない。

でも、たとえば、名前を暗記するといった些細なことでも、上司が自ら努力をして、部下に働きかける、それによって信頼が生まれるんだと思う。

かつて、イギリスに留学した時に聞いた話。

ケンブリッジ大学では、先の大戦、第1次世界大戦で、多くの卒業生が犠牲になったという。それは、彼らが、自ら率先して、最前線に立ち、その結果、斃れたという。ノブレス・オブリージュとはまさにこのことだろう。

で、最初の話、どうやって、上司は部下を管理するか。

それはうまく仲裁をするんじゃなくて、自ら率先して、死にもの狂いになって、必死に範を示すことで、信頼を得るってことなのかもしれない。

修羅場とリーダーシップ

5月 25th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (修羅場とリーダーシップ はコメントを受け付けていません)

先日、ある人とお話をしていて、”どうしたらリーダーシップを鍛錬することができるか?”という話をお伺いした。

彼いわく、”リーダーシップを鍛える一番の方法は、”修羅場をぐぐることだ”と。

それから数日後、たまたま、ワコール創業者の塚本幸一氏が松下政経塾の塾生へレクチャーした講和録を読んでいたら、”修羅場”の指摘がとても腑に落ちた。

塚本氏の修羅場

塚本氏は、20歳になった昭和15年に陸軍歩兵として出征し、中支で2年半、それから南方に転身する。

ベトナムのサイゴン、カンボジアのプノンペン、タイのバンコクから、ビルマを横切り、チンドウェイン川をわたってインパール作戦に参加。その後、インパールの敗戦のなかで生き残って、昭和19年10月に雲南集結。それから、またビルマへ反転作戦、敵に追われ追われて、イラウジ会戦。20年6月ビルマからタイの国境の、あの「戦場にかける橋」をわたってタイへ逃げ帰って、しばらくして敗戦なりました。

「松下政経塾講話録」 (松下政経塾編、PHP研究所、p60)

そして、終戦を迎えて、彼の小隊55名のうち、生き残ったのは彼を含めた3名しかいなかった。彼自身も5年間、毎日死と直面していたという。そして、彼は、いよいよ日本に帰れるという復員船のなかで、「はたして、自分で自分の命を守りきったのだろうか」と考えこんでしまう。

どう考えてみても、どの瞬間を取ってみても、自分の意識と、自分の能力と、自分の決意断行でもってできたことではない。あの時のあの一発の弾が、体をこっち向けたから、こう通っていたとか、あの時の食べ物についていた黴菌を自分は食べなかったから、その病気にかからなかったというように、一つ一つの現実が、自分の意志と能力であったかどうか。とんでもないことですね。それは、まったくの偶然といえば偶然ですが、偶然というには、あまりにも長すぎます。

(同p62)

そこで、彼はこう悟る、「いわゆる、親から授かった、今日まで生きてきた生命というものはおわったんだ。なくなった。今、こおkでこうして復員船に載せられて、日本に帰ってくるというこの声明は、いわば、与えられ、生かされた、おあずかりものの人生だ」と。その後の成功については、言うまでもないだろう。

塚本氏のように、戦中に生死の境をさまよって、その後、戦後になって、日本をリードした方は結構おられる。たとえば、東京電力の平岩外四氏、ダイエーの創業者中内功氏もそうだろう。こうした修羅場を乗り越えた方々が日本の戦後の繁栄をもたらしたともいえるかもしれない。

今は修羅場があるか?

ひるがえって、現代。また、別の人からこんなを話をきいた。最近、世界各国ともベンチャー投資が盛んで、とくに、政府が次の成長戦略ということで、ベンチャー企業に積極的に資金面から支援している、という。だけど、政府の支援に満足してしまって、ハングリーさが足りない、世の中を変えるようなプロダクトが生まれない、と彼は嘆く。

 リーダーシップという点では、おずかりものの人生か、国からお金をもらった事業か、どちらがリーダーシップが発揮できるかといえば、言うまでもないだろう。そして、”修羅場からリーダーシップが生まれる”というのは金言だと思う。逆に言えば、”かわいい子には旅をさせろ”方式も必要なのかもしれないと、塚本氏の経験から思ったのでした。