ベトナムベンチャー企業訪問記3 Hub IT & Shoppie

1月 16th, 2014 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (ベトナムベンチャー企業訪問記3 Hub IT & Shoppie はコメントを受け付けていません)

Hub ITは、ベンチャー企業ではなく、ベンチャーを支援するインキュベーションセンターです。創業者のBobby Liu氏はもともとシンガポールにてベトナム投資をされていた方で、今年、ハノイでスタートアップ向けのインキュベーションプラットフォーム hub.ITをスタートさせました。

hub.ITの目的は、ハノイにスタートアップの“エコシステム”を作ることです。具体的には、定期的に“ピッチイベント”を実施し、スタートアップを志すハノイの学生・事業家が自身のアイデアをプレゼンします。

そして、その中から有望と思われるアイデアをサポートすべくhub.ITの施設を半年間無料で利用、経営アドバイス、場合によっては、マイノリティ出資を受けることができます。そうしたインキュベーションをへて、巣立った企業が成功し、hub.ITの新しいスタートアップを応援するというエコシステムです。

Liu氏によれば、ベトナムのスタートアップとしてアクティブなエリアは、1.ソーシャルメディア、2.Eコマース、3.モバイルといったコンシューマー向けサービスであり、B2Bについてはほとんどやっていないとのこと。

 前述のように、ベトナムにおいて経済の中心はホーチミンですが、なぜ、ハノイでスタートアップ支援を始めたのかという問いに対して、“ハノイは大学などの教育機関もあり、スタートアップを目指す良い人材がたくさんいる”と指摘します。

前述のhub.IT内で新しいスマホサービスを提供しようとしているのがShoppieです。Shoppieは、一言でいえば、“モバイルクーポン”で、 Shoppieの創業者Dao Thanh Tuyen氏は、2013年このサービスを立ち上げ、6月にはHanoi Startup Weekend Awardを獲得。現在は、iPhone版、Android版のアプリをリリースしました。現在は、10名程度の人員で、アプリの改良、マーケティング等を実施しています。

 Foursquareのように、Shoppieに対応している店でチェックインし、商品を購入すると、pie(ポイント)が付与される、いわゆる、ポイントサービスアプリです。現状では、GPSを利用して位置測定をしているものの、創業者のDao Thanh Tuyen氏によれば、BTLE(Blouetooth Low Energy、いわゆるiBeacon)を利用して、ユーザが店舗に入ったら、push配信を実現する仕組みをサポートする予定です。

 現状では、ハノイの一部の店舗 (AK Club, ALCADO, HICCUP, LOVE’S CREPE, BOO FASHION, X-FACTORY)でShoppieを利用することができますが、2年間のうちにベトナムのハノイ以外にも拡大、さらには、ASEAN地域への拡大する予定です。

shoppie: http://shoppie.com.vn/

hub.ITオフィス

爆速経営―新生ヤフーの500日

12月 15th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (爆速経営―新生ヤフーの500日 はコメントを受け付けていません)

レビュープラス様より、「爆速経営―新生ヤフーの500日」を頂きました。ありがとうございます。

自分の経験から言うと、組織を変えるのはすごく難しい。

とくに、規模が大きくなればなるほど、大規模に組織を変えようとすると、それに反対する抵抗勢力がでてくる。そして、その抵抗勢力との間で妥協すると、結局、骨抜きになって何も変わらない。こういうシチュエーションをよく見てきました。

では、どうやって組織を変えるか?

この本にはこのヒントがあると思う。

 まず、トップが決断する、決断するのは、ソフトバンクの孫社長、彼が主宰する社内大学「ソフトバンクアカデミア」で、あるヤフーの元社員で受講生がヤフーを「MOTTAINAI」(もったいない)と主張。それはヤフーは、インターネットについては日本一の会社であるものの、「スピード感の欠如、過度なリスク回避志向、そして、組織の風通しの悪さ。症状だけから判断すれば、ヤフーは典型的な「大企業病」だ。」(p38)。そして、孫社長は、宮坂氏をトップとしてヤフーの経営体制を変えことを決める。

 新しい体制で何を変えるか、まず、新生ヤフーの理念を「僕らは課題解決エンジンを目指し、何よりもユーザーファーストを考える」(p82)として決める。その理念を「大企業病」である組織全般に伝えるのは難しい。彼の言葉を借りれば、

「何だろう、『王様は裸だ』という感じですよ、ある種。普通、改革者って浮くわけですよ。周りから何だあいつ、ばかじゃねえとかいわれるわけですね。疲れますからね、リーダーシップって。(p84)

これもわかるなあ、たとえ、社長であっても、全然違う方針を打ち出せば、やはり、”浮いてしまう”、でも、最初は浮くかもしれないけど、積み重ねるうちに徐々にフォローする人が増えてくる。そして、ユーザファースト、課題解決という理念をもとに、201x年までに営業利益を2倍にすべく、1.オンリーワン、2.異業種最強タッグ、3.未踏領域への挑戦、という3つの戦略を打ち出す。

 その後の、ヤフーの快進撃については、あえて、ここで説明する必要はないでしょう。ユーザを第一にして、早く意思決定をする、名実ともにヤフーは爆速経営の会社になりつつあると思う。

 そういう意味で、この本は、”サクセスストーリー”ともいえる。で、サクセスストーリーと冒頭の組織改革できない会社の違いは何か?おそらく二つあると思う。一つは、トップの意思、ヤフーでいえば、孫社長の危機感ともいえる。そして、もう一つは、宮坂氏の情熱。ヤフーを変えたいという気持ちがなければ、”浮いたまま”になってしまう。最初は、”浮いている”けれども、情熱をもって、まわりに接することで、どんどん社内にフォロワーを増やす、この2つなんだろうと思う。

 EC無料化のところについては、現在起きている事象なので、なかなか書きにくいところもあろうと思いますが、基本的にこの”組織改革”がちゃんと書かれていて、良い本だと思いました。

爆速経営 新生ヤフーの500日 爆速経営 新生ヤフーの500日
(2013/11/07)
蛯谷 敏

商品詳細を見る

インプットとアウトプットのバランス

8月 17th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | 経営 - (インプットとアウトプットのバランス はコメントを受け付けていません)

かつて証券会社でアナリストをやっていたときの話。

アナリスト(野村証券、みずほ証券などのような株を売る側、通称、セルサイド)は、基本エクイティセールス(以下、営業)とタッグを組んで、顧客(機関投資家、XX信託銀行、XXアセットマネジメントなど)に株を推奨する。

それで、アナリスト当時、苦労していたのは、インプットとアウトプットのバランス。

アナリストのインプットは、自分の担当業界(IT業界など)の会社に足しげく通って、取材して、カバー(将来の収益予想モデルをつくって、メンテする)する。電話で確認する場合もあったけど、実際に訪問すると、微妙なニュアンスを感じ取れたりするので、基本、足で稼ぐことが大切。

アウトプットは、足で稼いだ情報を、レポートとして提出し、その内容をミーティングなどで機関投資家に伝える。その情報に従って、投資すると、リターンを取れる場合もあるし、そうでもない場合もある。

それで、難しいのは、インプットとアウトプットのバランス。インプットばっかりで、なんもアウトプットしてないと、”ちゃんと仕事してんの?”となってしまう。一方で、インプットなしでアウトプットだけだと、上っ面をさらっただけでアウトプットの深みがなくなる。


ちなみに、この図式、IT業界でもかなりよくある。営業と技術の関係は営業とアナリストのそれと全く同じだ。

営業は、その名の通り、自社の製品(サーバ、パソコン、ルータ)などを売るのが仕事。

でも、営業がすべてお客さんのところに行って、お客さんでの契約を受注できるとは限らない。

たとえば、お客さんのところの技術担当者が”技術を呼んでよ”となり、技術を呼んで、その技術が、お客さんに対して、説得できる説明であれば、お客さんは発注する。

ただし、技術もずっとお客さんのところにいってアウトプットしては、製品についてのインプットがなくなり、気がついたら、自社の最新製品を知らなかった、というのは結構多い。

アナリストと営業、技術と営業、結局のところ、重要なのはバランスなんだと思う。インプットとアウトプットのバランスをとる、これは楽なようで難しい、でも、それをやらなくてはいけないってことだと思う。

小さな組織と大きな組織

7月 31st, 2013 | Posted by admin in 経営 - (小さな組織と大きな組織 はコメントを受け付けていません)

先ので紹介したようなベンチャー企業がどうやって大きくなるかということと同じくらい、IT技術が進化したとき企業の組織はどうなるか?ということに興味があり、様々な企業との関わりのなかで、いろいろ学んできました。

まず、思うのは、中間管理職が少なくなってきているということ。

会社を軍隊に例えるとするならば、大きな企業であれば、事業部(連隊)があって、その下に部(中隊)があって、課(小隊)がある。その目的は、軍隊では、当然のことながら、トップがすべての小隊の動きまで指示することは現実的でない。だから、トップが方針を伝えて、それを上意下達で、末端まで伝える方法が現実的だし、大企業も同じ事が言える。

でも、ネット時代になって、これがちょっと変わってきた、と思う。

たとえば、自分の知っているいくつかの会社は中間管理職がない、だから、経営陣が直接、事業にタッチして、日々の業務に当たる、いわゆる、プレイングマネージャーとも言えるかもしれない。

このプレイングマネージャーのメリットは、やはり、スピードだと思う。普通の指示系統だと、平社員 → 課長 → 部長と稟議決済の場合、それなりに時間がかかる。

それを中間管理職をすっ飛ばして、直接経営陣が決済すれば話は早い。

[ad]

くわえて、常に現場にいるというのも強みだと思う。

どの会社でも、上長への報告は必須だけど、100%正しく報告されているわけではない。やはり、自分の保身のためにも、偏った報告をする場合がある。

そして、偏った報告は、会社の意思決定をも誤らせてしまう可能性もあり、そして、その報告が誤りとわかるまで意外と時間がかかる、だからこそ、直接現場から報告を挙げてもらえば、こうした報告の誤りを防げる可能性は高い(現場の人間が誤った報告する可能性はあるけど、でも、現場を見ていれば誤りはわかることが多い)。

こう考えると結局のところ、組織は小さい方がよいと思う。そして、本来であれば、大きな組織であっても、ネットのレバレッジによって小さくてシンプルにすることができる。

ただ、難しいのは、組織を小さくてシンプルにするのが正解なのはわかっているけど、それを実行するのは楽ではない。

たとえば、田舎の場合、”組織を小さくシンプルにします”という話だと、やはり、雇用調整をせざるをえないけど、現実的にできるかといえば、難しい。

そう、世の中にはたくさんのしがらみがある、田舎の雇用は、その”しがらみ”の最たるものだろう。

そして、その”しがらみ”をどう断ち切っていくか、経営が歯を食いしばって、断ち切るしかない。

結局、いつものオチなんですが、”組織は小さくてシンプルの方がよい”、これはネットのレバレッジによって、ますます加速しているように思うのです。

オープン化のチカラ

6月 13th, 2013 | Posted by admin in イノベーション - (オープン化のチカラ はコメントを受け付けていません)

オープンであることはいいことだ。これは当たり前と言えば当たり前だけど、その恩恵は何?と言われるとなかなか難しい。

そんななかで、これはオープンにしたからこそ、なし得たことと思うのが、モンゴルの少年のMIT入学の記事。

朝日新聞の良質な教育は国境を超える ネット無料講座で広がる世界によれば、モンゴル ウランバートルに住む高校生バトゥーシグさんは、

 教育機関エデックスで昨春、MITの2年生向け講座「電子回路」を受けた。受講生15万人のうち満点は340人。当時15歳で満点を取った彼は、教授を「天才」と驚かせた。周囲に勧められてMITを受験し、合格。「エデックスがなければ今の僕はなかった」と喜ぶ。

EDX(エデックス)は、ハーバード大学とMITが設立したオンライン授業プラットフォーム、単にオーディエンスとしてビデオを見るだけもできるけど、授業をビデオで受講して、宿題をこなせば、修了書がもらえる本格的なオンライン学習の仕組みで、今のところ、59のコースが登録されている。

では、なぜ、大学は、”タダ”でこんなオンライン学習の仕組みを提供するか?

 その答えが、バトゥーシグさんだ。モンゴルであれば、そう簡単に、米国留学できるものではない。でも、オンラインであれば、ネットが使えるところであれば、タダで授業を受けることができる。そして、その受講生のなかに、キラリと光る人材がいれば、大学はこれを奨学金を出して迎える。これは、オープンにしたからこそできること。すなわち、授業をタダにしても、素晴らしい人材を採用できるわけだから、事業としてやる価値はあり、まさに、オープン化が生み出すイノベーションの一つだと思う。

 そう思うと、すごい時代になったものだ。バトゥーシグさんの話は、別にモンゴルじゃなくても、ネットがあって、英語ができる環境であれば、世界各国どこでも起こり得る話だ。逆に言えば、ネットと英語があれば、世界中のポテンシャルを持つ人間をスカウトすることができる。逆に、日本語だけだったら、一部の外国の日本語学習者しかリーチできない。そういう意味で、オープン化すればするほど、世界が均一化するということでもあるかもしれない、まさに、トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」の話だ。かつて、ケンブリッジに留学していたとき、シンガポールの留学生がいて、彼曰く、自分の親は英語が喋れず中国語のみ、一方で、息子は中国語が喋れず英語のみ、なので、祖父母と孫とは言語コミュニケーションがやりにくいと、言っていてなるほどと思った。

 そういう意味で、オープン化はとても大きなチカラを持っているけど、その負のチカラも大きい。結局のところ、バランスなんだと思う。オープン化によるグローバルな視点を持ちながら、ローカルなことも考えられるバランス感覚をもつ、こういう人間になりたいものです。

 

修羅場とリーダーシップ

5月 25th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (修羅場とリーダーシップ はコメントを受け付けていません)

先日、ある人とお話をしていて、”どうしたらリーダーシップを鍛錬することができるか?”という話をお伺いした。

彼いわく、”リーダーシップを鍛える一番の方法は、”修羅場をぐぐることだ”と。

それから数日後、たまたま、ワコール創業者の塚本幸一氏が松下政経塾の塾生へレクチャーした講和録を読んでいたら、”修羅場”の指摘がとても腑に落ちた。

塚本氏の修羅場

塚本氏は、20歳になった昭和15年に陸軍歩兵として出征し、中支で2年半、それから南方に転身する。

ベトナムのサイゴン、カンボジアのプノンペン、タイのバンコクから、ビルマを横切り、チンドウェイン川をわたってインパール作戦に参加。その後、インパールの敗戦のなかで生き残って、昭和19年10月に雲南集結。それから、またビルマへ反転作戦、敵に追われ追われて、イラウジ会戦。20年6月ビルマからタイの国境の、あの「戦場にかける橋」をわたってタイへ逃げ帰って、しばらくして敗戦なりました。

「松下政経塾講話録」 (松下政経塾編、PHP研究所、p60)

そして、終戦を迎えて、彼の小隊55名のうち、生き残ったのは彼を含めた3名しかいなかった。彼自身も5年間、毎日死と直面していたという。そして、彼は、いよいよ日本に帰れるという復員船のなかで、「はたして、自分で自分の命を守りきったのだろうか」と考えこんでしまう。

どう考えてみても、どの瞬間を取ってみても、自分の意識と、自分の能力と、自分の決意断行でもってできたことではない。あの時のあの一発の弾が、体をこっち向けたから、こう通っていたとか、あの時の食べ物についていた黴菌を自分は食べなかったから、その病気にかからなかったというように、一つ一つの現実が、自分の意志と能力であったかどうか。とんでもないことですね。それは、まったくの偶然といえば偶然ですが、偶然というには、あまりにも長すぎます。

(同p62)

そこで、彼はこう悟る、「いわゆる、親から授かった、今日まで生きてきた生命というものはおわったんだ。なくなった。今、こおkでこうして復員船に載せられて、日本に帰ってくるというこの声明は、いわば、与えられ、生かされた、おあずかりものの人生だ」と。その後の成功については、言うまでもないだろう。

塚本氏のように、戦中に生死の境をさまよって、その後、戦後になって、日本をリードした方は結構おられる。たとえば、東京電力の平岩外四氏、ダイエーの創業者中内功氏もそうだろう。こうした修羅場を乗り越えた方々が日本の戦後の繁栄をもたらしたともいえるかもしれない。

今は修羅場があるか?

ひるがえって、現代。また、別の人からこんなを話をきいた。最近、世界各国ともベンチャー投資が盛んで、とくに、政府が次の成長戦略ということで、ベンチャー企業に積極的に資金面から支援している、という。だけど、政府の支援に満足してしまって、ハングリーさが足りない、世の中を変えるようなプロダクトが生まれない、と彼は嘆く。

 リーダーシップという点では、おずかりものの人生か、国からお金をもらった事業か、どちらがリーダーシップが発揮できるかといえば、言うまでもないだろう。そして、”修羅場からリーダーシップが生まれる”というのは金言だと思う。逆に言えば、”かわいい子には旅をさせろ”方式も必要なのかもしれないと、塚本氏の経験から思ったのでした。

企業の寿命

5月 18th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (企業の寿命 はコメントを受け付けていません)

先日、ブックオフで100円で買った与謝野馨氏の「全身がん政治家」のこの一説が印象に残りました。彼は、アリストテレスを引用して、「政治の形態は、専制君主制と、寡頭制(すくない数の集団指導制)、デモクラシーの3つ。それぞれいいようで欠点がある。つづけていくと最後には危機に陥る。」と。

 これは企業にも同じ話で、デモクラシーのように社員の言うことばかりを聞く企業は一見よさそうに見えるけど、結局うまくいかない場合が多い(社員の意見はバラバラなので、それをまとめると妥協の産物になる)。かといって、専制君主のようにカリスマオーナーが会社を引っ張る場合、一代ではいいけど、そのカリスマオーナーの次が引っ張っていけないという場合も多い。

企業の寿命は30年とよくいわれる、やはり、会社を、専制君主制、寡頭制、デモクラシーいずれかの方式で設立して、そのやり方に限界がくるのは30年ということなんだろうと思う。逆に言えば、100年、200年と生き続ける企業の場合、同じように、どこかで限界が来るに違いない。でも、その限界を打ち破る、たとえば、カリスマ―オーナーがいなくなったあとは、後進が必死に食らいついて寡頭制に移行する、寡頭制で仲間割れになった場合は、カリスマオーナーが復帰する、など。

 会社を作るのは簡単だけど、それを長く続けるのは難しい、アリストテレスの言葉はそれを表しているように思います。

仕事を奪うITと生涯現役

5月 8th, 2013 | Posted by admin in 独立 | 経営 - (仕事を奪うITと生涯現役 はコメントを受け付けていません)

今週(5月11日)の週刊ダイヤモンドの特集は、”仕事消失時代”に生き残るビジネスマン、このところよく見かけるテーマだけど、なかなかよくまとまっていると思った。

仕事を奪うIT

最近、つらつらと考えているのは、ITと仕事の関係。いうまでもなく、コンピュータに人間の仕事の一部を任せることによって、生産性を上げる、30年前くらいからOA(Office Automation)革命と言われたけど、今も昔もこのコンセプトに本質的な違いはないと思う。でも、コンピュータに仕事を任せれば任せるほど、人間の仕事がなくなる。これはいいことでもあって、悪いことでもあるとおもう。

自分もOA化の現場にしばしば立ち会うことがあり、先日では、ある経営者は「うちもシステム入れ替えて、全部、電子化にしたいけど、電子化にすると、人がいらなくなるので、地元の雇用に影響がでてしまう」と。米国流にいけば、バッサリ余剰人員を削減するのが、”合理的”なんだけど、地元にとっての企業は”共同体”的な要素もあるので、なかなか踏み込めないようだ。

 ただ、最近感じるのは、この特集にも言及しているように世の中の多くが”サービス化”していること。サービス化の定義はいろいろあるけど、自分の理解は、”価値が情報によって決まる要素が多い”ことだと思う。例えば、100円でつくった鉛筆を110円で売る場合と、この鉛筆の出自、いかに希少であるかという”情報”を付与して300円で売る場合、言うまでもなく後者の方がサービスとしての価値が高い。というわけで、結局、サービス化するということは、情報あるいはOA化と切っては切れない関係にあるんだと思う。

生涯現役社会

 じゃ、どうするか?世の中すべての人間が、”ある製品に情報という付加価値をつけてプロデュースする”プロデューサー”になるのはあまり現実的ではないと思う。結局のところ、記事の清家慶應塾長が指摘するように、”2030年代には、「3人に1人」が65歳以上になる。人口の「3分の1」にもなる人たちを特別扱いすることはできない。意思と能力のある人がいつまでも働き続ける社会、すなわち生涯現役社会を作らなければならい”なんだと思う。

どうやって生涯現役をつくるか、やっぱり、これって”意思”なんだろうと思う。自分が独立した理由の一つは生涯現役でいたいと思ったから。80歳くらいまでインディペンデントコントラクターとしてマネージメント(経営管理、プロジェクト管理)の仕事をしたいと思っていて、かりにサラリーマンだったら自分の年だと折り返し地点だけど、80歳ピークだとまだまだ学ぶことが多くてこれからです。いずれにしても、今回の特集からいろいろ学ぶことがありました。

 

もくじ

・こうしてあなたの「仕事」は消失する(Part1)
 1.日本的雇用慣行のひずみ(年功賃金制度の崩壊など)
 2.スキルの陳腐化(自己完結型の目的達成力)
 3.産業構造の変化(製造業・建設業従事者の減少など)
 4.IT・ロボットの進化(無人化・省エネ生産ラインの配置、開発者・技術者の配置転換が困難)
 5.グローバル化の加速(新興国の台頭)
 →5つの雇用激変が「男性ミドル」にしわ寄せ

・5つの激変が招くミドル世代の受難(Part2)
 1・狙われる中高年社員:賃金抑制・雇用調整の包囲網
 2.能力やスキルの陳腐化であなたの居場所がなくなる
 3.サービス業への産業シフトで男は仕事喪失、女は雇用創出
 4.有資格者も安心できないホワイトカラーと機械との競争
 5.日本人の居場所を脅かすトップ級”外国人との競争”

・40歳から始めようキャリアチェンジの心得(Part3)
 ・職種・業種の垣根を越える”ポータブルスキル”

 ・組織で働く人も”市場で生きる力”を身につけよ

フォン・ノイマンに学ぶ その1

5月 5th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | フォン・ノイマンに学ぶ - (フォン・ノイマンに学ぶ その1 はコメントを受け付けていません)

「できる人はどこが違うのか?」-こういうテーマを以前から追っかけています。そして、そのなかで、自分がもっともできる人と思うのがフォン・ノイマンです。
フォン・ノイマンは、20世紀最大の科学者で、数学(シミュレーションの基礎)、物理(量子力学の数学的基礎つけ)、経済学(ゲーム理論)、そして、フォン・ノイマン型と呼ばれる今のコンピュータの原型、彼が世界を変えたものをあげるときりがないくらいすごい人。ノーベル経済学賞を受賞したP.サミュエルソンをして、「フォン・ノイマンほどの人間を知らない。この分野にちょっと顔を出しただけで経済学の世界をがらりと変えた。」とたたえる。さらには、核融合でノーベル物理学賞を受賞したハンス・ベーテも、「フォン・ノイマンの頭は常軌を逸している。人間より進んだ生物じゃなかろうか。」と言わしめるほどの天才だ。この稀代の天才がどのようにして生まれて、何を考え、何を成し遂げたのか、「フォン・ノイマンに学ぶ」としてシリーズ物(不定期更新)で追っていきます。ネタになっているのは、「フォン・ノイマンの生涯」(ノーマン・マクレイ著、朝日選書)です。

天才をつくるモト

 フォン・ノイマンが生まれたのは、1903年のハンガリーの首都ブタペスト、当時のブタペストはニューヨークと並んで、移民を自由に受け入れていることもあり、世界でもっとも繁栄している都市だった。そして、裕福な資産家の家に生まれた彼は、両親からの薫陶を受けて、音楽、ラテン語、ギリシア語など、当時必要な教養を身につける機会を得る。とくに、当時のハンガリーのギムナジウム(高校)において、もっとも重要な科目がラテン語、毎日1時間月曜から土曜までびっしり8年間ラテン語をたたきこまれる。

 もともとの頭のつくり、遺伝はもちろんあるんだろうけど、やはり、彼が徹底的にラテン語を幼少時に叩き込まれたということが、彼の活躍の基礎になっているのは間違いない。具体的には、
ラテン語とフランス語の世界へ!において、松澤先生は下記のように指摘しています。

ラテン語は語根と接頭辞の使い方が、コンピュータのプログラムのように理路整然としています。接頭辞と語根がまるで表計算ソフトで整理したように、縦横に単語が作られています。接頭辞100個と語根500個と接尾辞50個で組み合わた表を作ると、25万個の単語を作ることができます。この25万個の単語を使って、コンピュータで作文したものを当時のラテン語を使っている人々に読ませたら、恐らく意味が理解できるのではないかと思われます。実際のラテン語では、この組み合わせのうちの2割ぐらいしか使われていません。

数学、物理学、経済学、そして、コンピュータ、いずれに共通するのは”ロジックを積み上げること”、すなわち、数学の証明のようにものごとを理路整然と考えて、そこから答えを出すことが要求される世界だ。たとえば、自分が関わっているコンピュータでは、あたりまえだけど、コンピュータはプログラムした通りにしか動かない。そのなかで、コンピュータをどう設計するか、それは”勘”ではなくて、理路整然としたロジックが必要になる。そして、幼いころからラテン語を学ぶことによって、こうしたロジックを積み上げる素地を作ったと。だから、”天才科学者をつくるにはどうすればよいか?”という質問が成り立つとしたら、”ラテン語を徹底的に勉強する”というのは一つの答えになるかもしれない。

  

プログラミング科目を必須にすべき3つの理由

4月 7th, 2013 | Posted by admin in テクノロジー | プログラミングを考える | 経営 - (プログラミング科目を必須にすべき3つの理由 はコメントを受け付けていません)

プログラミングを高校・大学の必須科目にすべきという話があるけど、自分はこれにもろ手を挙げて賛成です。

もちろん、高校・大学でちょっとプログラミングを勉強したところで、すぐに企業に入って役に立つというわけでもないけど、次の3つの理由からとても大事と思います。

必須にすべき理由その1:目に見えないシステムを理解する

 システムを作る作業は基本的には建築現場の土木工事に似ている。まず、どんな建物ができるかきちんと設計し、予算を割り当てて、リソース(自社ですべてできる場合は少ないので、場合によっては外注)を確保して、スケジュール通りに仕上げる。ただし、土木工事と違う点は、土木工事は目の前の建物が建っているのはわかるのに対して、システムの場合は、目に見えないこと。そして、目に見えないから、”こんなシステムすぐできるだろう”のように無茶をいう経営者もそれなりにいる。もちろん、あえてシステムを知らないことで自由な発想を生み出すことができるのも事実だけど、目に見えないシステムをプログラミングを通じて理解するのはとても重要だと思う。

必須にすべき理由その2:プログラミングの裾野を広げる

 高校・大学でプログラミングをやったからといって、全員がシステム会社に就職するわけでない。たとえば、自分は大学時代、慶応湘南藤沢キャンパスで6年間過ごして、最初の1年は情報処理のクラスでプログラミング(C言語)が全員必須だった。そして、SFC生全員がシステム会社に入ったかというと、もちろん、そんなことなく、銀行にいったり、公務員になったり、商社にいったり、プログラミングと全く縁遠い業界に入った卒業生も無数にいる。でも、かつて、裾野の広さと500 startupsというエントリで書いたように、ニュージーランドのラグビーのようにプログラミングの裾野を広げることは、次の新しいベンチャー、産業を生みだす点で大切。

必須にすべき理由その3:問題切り分け力をつける

 当たり前だけど、コンピュータは人間が指示したことしか実行しない。そして、プログラミングは、やや抽象的な言い方だけど、”コンピュータに指示する手続き”ともいえる。そして、コンピュータにプログラミングによって”指示”しても、自分の思い通りに行かないことが多々ある、いわゆる、”バグ”だ。それで、どうやって、バグを見つけて、正しい動作にするか、それが”問題切り分け力”だと思う。不具合の原因をあらゆる可能性から検討して、問題解決のあたりをつけて、そして、修正する。自分も最近コンサル案件でプログラミングの手伝いをすることがあるけど、結局、プログラミングとは、問題切り分け作業の連続だと思う。そして、言うまでもなく、この問題切り分け力は、プログラミングだけではなくて、営業、製造、管理、経営などあらゆる場面に応用が効く力で、こうした力はプログラミングによって涵養される要素が大きいと思う。

最後に

 これまでシステムエンジニアの採用を経験したことがあって、そこからわかったこと。それはシステムエンジニアには2つのタイプがある。一つは、あるプログラミング言語に特化して、それを極めるタイプ、今だと、Javaのフレームワークなどそれなりに需要があるので、特化タイプもマーケットはある。一方で、プログラミング言は、言語体系は違えど、考え方(制御構造、データの持ち方、アルゴリズムなど)は同じなので、あるプログラミング言語をマスターして、それを別のプログラミング言語に応用できるタイプ。企業とくに小さい企業では、後者の方が柔軟性があるので、こっちの方がニーズがある。そして、プログラミング科目必須になって、後者のような柔軟に応用ができるタイプがたくさん育てば、これほど日本全体にとってプラスなことはないと思う。