ミクロの視点とマクロの視点

8月 31st, 2013 | Posted by admin in 経営 - (ミクロの視点とマクロの視点 はコメントを受け付けていません)

先日、とある方と話すことがあって、とても納得したこと。

それは、ミクロの視点とマクロの視点、両方必要ということ。

たとえば、大河ドラマだと、ミクロの視点は1話1話のストーリー、そして、マクロの視点は全体のストーリー。

だから、1話1話のストーリーがつまらなくても、ダイジェスト版で見ると、全体のストーリーが意外と面白いということがよくある。

最近のあまちゃんが秀逸なのは、1話1話のストーリーがよく練られていながら、かつ、全体のストーリーも深みがある、こんな秀逸のドラマは、はなかなかお目にかかれるものではない。


それで、これは本の話も同じ。自分も何冊か本を書いたけど、自分の書く本は、だいたい1つの話題が1000~2000字くらい、それを10項目まとめて1章にして、全体で6~7章あるパターンが多い。そのとき、言われてみて、そうだなとおもったのが、マクロの視点とミクロの視点。

一つの話題の面白さも重要だけど、それ以上に重要なのが、マクロの視点、一つ一つを重ねて、そこから何が鳥瞰できるのか、こっちの方が大事だと思います。

そして、これは、”デザイン”によるところが大きいと思う。自分の経験からいうと、ミクロを頑張って仕上げて、それがしっかりしたマクロにもなるというパターンはあまりない。でも、最初にマクロを作っておいて、そこからミクロを仕上げていく、こっちの方がやりやすい。だからこそ、全体像が必要なのかと思いました。

常勤と非常勤について考える

8月 21st, 2013 | Posted by admin in 経営 - (常勤と非常勤について考える はコメントを受け付けていません)

最近、考えているテーマが、常勤と非常勤。英語でいえば、フルタイム(full-time)とパートタイム(part-time)

兵法という観点からすれば、フルタイムとパートタイム、どちらが良いかと言えば、フルタイムに決まっている。

孫子の兵法いわく

。我は専りて一と為り、敵は分かれて十と為らば、十を以て其の一を攻むるなり。我寡なくして敵衆き、能く寡を以て衆を撃つ者は、則ち吾が与に戦う所の者約なればなり。

敵軍が自軍の10倍であった場合、そのまま正面突破しては勝ち目がない。だからこそ、1点集中して、強大な相手を撃破する。常勤、非常勤という話、この点からみれば、明らかに、常勤に分がある。そもそも、軍隊の場合、火曜-金曜までサラリーマンですが、土曜-月曜は軍隊入ります、というのは基本的にありえない。という意味では、非常勤(パートタイム)という概念は成立しにくい。

一方で、非常勤が必要な場面もある。自分の知っている範囲では、会社の非常勤役員。役員には、2種類あって、毎日出社する常勤役員と毎日ではないものの、取締役会など会社の重要会議に参加する非常勤役員。

この”非常勤”というスタイル、自分はとても重要だと思う。もちろん、前述のように兵力の一点集中という点では、非常勤は確かに弱い。その理由は、やっぱり、常勤でないと、戦況の逐次把握が難しいから、24時間365日戦況をウオッチしている人と、3日に1回しかウオッチしていない人ではやはり差が出る。でも、一方で、非常勤のよさは、様々な視点でモノを視ることができること。


作戦はつねに正しいとは限らない、ときによっては、とんでもないプランを社長がぶち上げることがあるけど、トップ以下だれも反対できないので、なし崩し的に賛成というケースは、いままで自分の見た範囲では、結構ある。そんなとき、やっぱり、客観的にモノを視る存在は、やっぱり、必要だと思う。

そういう意味で、日本で社外取締役の重要性を主張しているけど、自分もこれに全面的に同意したい。戦況をつねにウオッチしながらも、その戦地が戦っていることが正しいのか、あるいは、他の方策はないのか、様々な観点から議論する、これは会社を変な方向に向かわせないためには、とても重要なことだと思うのです。

奇跡の営業

8月 21st, 2013 | Posted by admin in 独立 | 経営 - (奇跡の営業 はコメントを受け付けていません)

レビュープラス様より、「奇跡の営業」(山本正明著、サンマーク出版)をご献本いただきました、ありがとうございます。

この帯には、こうあります。

ただのおじさんが
 未経験にもかかわらず
 44歳で転職。
 入社以来たった10年で
 驚異の連続挙積
 460週を達成して
 ソニー生命
 4000人の
 トップに立った
 秘訣とは?

で、この秘訣はなんだろう?

筆者の山本氏は、これまでゼネコンに勤務していたこともあり、人を圧倒する話術、でトップに立ったわけではない。

むしろ、その秘訣は、”人から人へ紹介してもらう”ことにあるというのが本書の趣旨だ。

そして、人から人に紹介してもらうためのツールとして、アンケートがあり、これは、

あなたがトップ営業マンになるためには、このアンケートを「自己分析ツール」として活用することで、より大きな自己成長、そして、「紹介」につなげていく必要があります。p52

と筆者は主張する。

自分もネットでどうやって口コミを拡大するか、ということでしばしばコンサルティングの依頼をいただくけど、そうしたとき、まず、考えるのは、どうやって、口コミをする仕組みをつくるか。

世界で最も口コミが成功した例は、1950年代のタッパーウェア、いまでこそ、”タッパー”といえば、食べ物等を冷蔵庫で保存するための無くてはならないものだけど、タッパーが登場した1950年代はこうした仕組みがまったくなかった。そこで、タッパーウェアでは、主婦がホームパーティを主催する際に、タッパーウェアを紹介する仕組みを考案。パーティで主婦がタッパーを紹介し、そのパーティに参加した別の主婦がタッパーの良さを理解して、自分でパーティを開催、そうして口コミがどんどん拡大。今のタッパーの原点になったと。

筆者が提案する、”アンケート”もこのタッパーウェアのホームパーティに近いかもしれない。すなわち、アンケートを実施し、そのアンケートから得られた次の紹介者を開拓し、と、どんどん開拓が進むと。そういう意味では、筆者のアンケートという手法は、斬新な手法ではないものの、口コミで人を納得させる古今東西変わらない方法と言えるかもしれない。

文章もとても平易なので、”口コミでビジネスどう広げるか”を考えるにはよい本だと思いました。

インプットとアウトプットのバランス

8月 17th, 2013 | Posted by admin in イノベーション | 経営 - (インプットとアウトプットのバランス はコメントを受け付けていません)

かつて証券会社でアナリストをやっていたときの話。

アナリスト(野村証券、みずほ証券などのような株を売る側、通称、セルサイド)は、基本エクイティセールス(以下、営業)とタッグを組んで、顧客(機関投資家、XX信託銀行、XXアセットマネジメントなど)に株を推奨する。

それで、アナリスト当時、苦労していたのは、インプットとアウトプットのバランス。

アナリストのインプットは、自分の担当業界(IT業界など)の会社に足しげく通って、取材して、カバー(将来の収益予想モデルをつくって、メンテする)する。電話で確認する場合もあったけど、実際に訪問すると、微妙なニュアンスを感じ取れたりするので、基本、足で稼ぐことが大切。

アウトプットは、足で稼いだ情報を、レポートとして提出し、その内容をミーティングなどで機関投資家に伝える。その情報に従って、投資すると、リターンを取れる場合もあるし、そうでもない場合もある。

それで、難しいのは、インプットとアウトプットのバランス。インプットばっかりで、なんもアウトプットしてないと、”ちゃんと仕事してんの?”となってしまう。一方で、インプットなしでアウトプットだけだと、上っ面をさらっただけでアウトプットの深みがなくなる。


ちなみに、この図式、IT業界でもかなりよくある。営業と技術の関係は営業とアナリストのそれと全く同じだ。

営業は、その名の通り、自社の製品(サーバ、パソコン、ルータ)などを売るのが仕事。

でも、営業がすべてお客さんのところに行って、お客さんでの契約を受注できるとは限らない。

たとえば、お客さんのところの技術担当者が”技術を呼んでよ”となり、技術を呼んで、その技術が、お客さんに対して、説得できる説明であれば、お客さんは発注する。

ただし、技術もずっとお客さんのところにいってアウトプットしては、製品についてのインプットがなくなり、気がついたら、自社の最新製品を知らなかった、というのは結構多い。

アナリストと営業、技術と営業、結局のところ、重要なのはバランスなんだと思う。インプットとアウトプットのバランスをとる、これは楽なようで難しい、でも、それをやらなくてはいけないってことだと思う。

新しい分野を知る 独立ノウハウ

8月 12th, 2013 | Posted by admin in 独立 | 経営 - (新しい分野を知る 独立ノウハウ はコメントを受け付けていません)

かつてアナリストとして、上場企業の経営者にインタビューしたときのこと。

自分はかつて、大学で長いこと研究生活を送ったこともあり、ITのことは何となくわかったけど、たとえば、半導体、自動車になると、よくわからない。で、その上場企業は、一応、IT企業だけど、かなり別の分野に特化した分野で、正直、全然事業がわからなかった。

それで、経営者は、”こいつわかってないな”とすぐに看破する、もちろん、だからといって何も教えてくれないというわけではないけど、深い議論ができない。それで、そのときも、自分のトンチンカンな質問からそう思ったのだろう。まさに、言葉はオブラードに包みながらも、”こいつわかってないな”オーラ全開だった。

”わかってない”からどうなるわけでないけど、やはり、そのときは悔しかった。

自分がもうちょっとその分野のことを知っていれば、もっと、良い話を聞けたかもしれないと。


爾来、新しい分野で心がけるようになったこと、それは、片っぱしから、その分野の本を読みあさること。

いまでも、自分の全く知らない分野の新規事業企画、コンサル等の依頼をいただくことがある。いままで自分が持っているノウハウを提供するだけなら、勉強する必要はないけど、独立するとそうはいかない。やはり、必然的に新しい分野にチャレンジして、それを自家薬籠としないと食べていけない。

そのときも、まず、最初にやることが、その分野の本を片っ端から読む。

とくに、最近では、Amazon.comのマーケットプレイスを使うと、送料はかかるものの、中古でかなり安く欲しい本を手に入れることができる。ひと昔前だったら、古本屋めぐりをしなくちゃいけないところだけど、最近は、よくも悪くも古本屋めぐりがなくなった。

やはり、全然知らない分野なので、本を読んでも正直よくわからない。でも、何冊か読んでいくと、だいたい、最大公約数的な似たようなところがあって、それを抑えていくと、なんとなく、わかったつもりになっていく。たとえば、自分でいえば、ずっとITをやってきたので、ITのたとえで理解するようにしている、たとえば、簿記は、TCP/IPと同じで、ゆるやかな枠組みだけ提供してエンドが頑張る、のような。

それで、最大公約数からどうやって細部に入るかは、また、次回。

初年兵教育に学ぶリーダーシップ

8月 5th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (初年兵教育に学ぶリーダーシップ はコメントを受け付けていません)

先日、ある人がこんなことを言っていた。

「部下は、たくさんいると指揮しやすいんだけど、2~3人だと、ウェットになって大変なんだよね」

これは、自分にも経験があるけど、よくわかる。2~3人が仲良くやっていればいいけど、やっぱり、そうはいかない。うまくいかないときもある。

うまくいかないとき、上司はどうするか。これはこれで難しい問題だ。もちろん、もめごとがあれば、仲裁して、うまく方向づけるのが上司の仕事なんだろうけど、世の中、そんなに簡単にいくわけではない。大岡越前のように喧嘩両成敗みたくバッサリ成敗できればいいけど、全員が納得する仲裁は難しい。一人はハッピーかもしれないけど、もう一人は禍根を残すというのはよくある話。


そんな中、なるほどなあ、と思ったのが、瀬島龍三の回想録の話。瀬島龍三は、戦前・戦中は陸軍の大本営参謀として、太平洋戦争の作戦を立案し、戦後は、シベリア抑留をへて、伊藤忠商事副社長として、同社の発展の原動力となった人物。そして、彼が20歳そこそこで士官学校を卒業し、故郷の富山で初年兵の教官として教育にあたることになった。そして、最初にやること、それが初年兵およそ80名の名前、正確、学歴等の暗記という。

1月10日の入営前に、受け持ち初年兵一人一人の家庭状況、正確、学歴、職業、顔写真などを頭に入れて暗記しておく。入営して初めて初年兵と顔合わせしたとき、いきなり、教官の方から、「○○」と初年兵の名前を呼ぶ。呼ばれた初年兵は自分の名前が知られていることでハッと驚く。そして親近感が生まれる。これも一種の教育法だった。

瀬島龍三回想録 幾山河 p36

これって信頼なんだなあと。

やっぱり、上司となるひとが、「今日から自分はあなたの上司です」と言われて、常に上司面されて、威張られていたら、部下は信頼しない。

でも、たとえば、名前を暗記するといった些細なことでも、上司が自ら努力をして、部下に働きかける、それによって信頼が生まれるんだと思う。

かつて、イギリスに留学した時に聞いた話。

ケンブリッジ大学では、先の大戦、第1次世界大戦で、多くの卒業生が犠牲になったという。それは、彼らが、自ら率先して、最前線に立ち、その結果、斃れたという。ノブレス・オブリージュとはまさにこのことだろう。

で、最初の話、どうやって、上司は部下を管理するか。

それはうまく仲裁をするんじゃなくて、自ら率先して、死にもの狂いになって、必死に範を示すことで、信頼を得るってことなのかもしれない。

小さな組織と大きな組織

7月 31st, 2013 | Posted by admin in 経営 - (小さな組織と大きな組織 はコメントを受け付けていません)

先ので紹介したようなベンチャー企業がどうやって大きくなるかということと同じくらい、IT技術が進化したとき企業の組織はどうなるか?ということに興味があり、様々な企業との関わりのなかで、いろいろ学んできました。

まず、思うのは、中間管理職が少なくなってきているということ。

会社を軍隊に例えるとするならば、大きな企業であれば、事業部(連隊)があって、その下に部(中隊)があって、課(小隊)がある。その目的は、軍隊では、当然のことながら、トップがすべての小隊の動きまで指示することは現実的でない。だから、トップが方針を伝えて、それを上意下達で、末端まで伝える方法が現実的だし、大企業も同じ事が言える。

でも、ネット時代になって、これがちょっと変わってきた、と思う。

たとえば、自分の知っているいくつかの会社は中間管理職がない、だから、経営陣が直接、事業にタッチして、日々の業務に当たる、いわゆる、プレイングマネージャーとも言えるかもしれない。

このプレイングマネージャーのメリットは、やはり、スピードだと思う。普通の指示系統だと、平社員 → 課長 → 部長と稟議決済の場合、それなりに時間がかかる。

それを中間管理職をすっ飛ばして、直接経営陣が決済すれば話は早い。

[ad]

くわえて、常に現場にいるというのも強みだと思う。

どの会社でも、上長への報告は必須だけど、100%正しく報告されているわけではない。やはり、自分の保身のためにも、偏った報告をする場合がある。

そして、偏った報告は、会社の意思決定をも誤らせてしまう可能性もあり、そして、その報告が誤りとわかるまで意外と時間がかかる、だからこそ、直接現場から報告を挙げてもらえば、こうした報告の誤りを防げる可能性は高い(現場の人間が誤った報告する可能性はあるけど、でも、現場を見ていれば誤りはわかることが多い)。

こう考えると結局のところ、組織は小さい方がよいと思う。そして、本来であれば、大きな組織であっても、ネットのレバレッジによって小さくてシンプルにすることができる。

ただ、難しいのは、組織を小さくてシンプルにするのが正解なのはわかっているけど、それを実行するのは楽ではない。

たとえば、田舎の場合、”組織を小さくシンプルにします”という話だと、やはり、雇用調整をせざるをえないけど、現実的にできるかといえば、難しい。

そう、世の中にはたくさんのしがらみがある、田舎の雇用は、その”しがらみ”の最たるものだろう。

そして、その”しがらみ”をどう断ち切っていくか、経営が歯を食いしばって、断ち切るしかない。

結局、いつものオチなんですが、”組織は小さくてシンプルの方がよい”、これはネットのレバレッジによって、ますます加速しているように思うのです。

ソニー・ドリームキッズの伝説

7月 26th, 2013 | Posted by admin in 経営 - (ソニー・ドリームキッズの伝説 はコメントを受け付けていません)

戦後、焼け野原のなかで生まれたソニーというベンチャー企業が、30数年で世界を代表するエレクトロニクス企業にどのように成長できたのか、とても興味があります。

最初に読んだ本は、盛田昭夫の「MADE IN JAPAN」、盛田昭夫という第一人称からソニーをどのようにして大きくしていったのかが、とてもよくわかります。その成功の要因の一つは、トップダウン、トランジスタラジオの海外OEMを蹴って自社でUS販売を始めた件にしてもウォークマンの件にしても、”合理的”に考えれば、説明がつかない。でも、トップが決断して、結果的に果実を得る。

そして、次に、この本「ソニー・ドリームキッズの伝説」

「MADE IN JAPAN」は,盛田昭夫の一人称だけど、「ソニー・ドリームキッズの伝説」は、ジョン・ネイスンというソニーとは独立した第3者の視点からソニーの伝説に迫っていて、前述の、「なぜソニーがグローバル企業になれたのか?」に対して、様々なとくに米国の視点から迫っている。

自分の理解は、3つあると思う。

まず1つ目は、創業者井深大の”執念”、彼はテープレコーダの製造にしても、テレビの製造にしても、100台作ったとして、99台失敗しても、1台でも成功すれば、「絶対うまくいく」という執念で、原因を追究し、プロダクトを改良する、これがソニーの礎になったのは間違いないだろう。

[ad]

2つ目は、同じく創業者盛田昭夫の”外交”、彼が日本人として戦後早い段階で、生活の拠点を東京からニューヨークに家族で移住したことはよく知られている。もともと、日本のビジネスマンはほとんど日本にいる状況で、ニューヨークに居を構えているのは、ほとんど、彼一人という状況。そこで、彼は、ニューヨークの経済人くわえてワシントンの政治家とも太いパイプを築く。そうした状況ゆえに、アメリカ人からは、”日本でビジネスしたければ、政治家ではなく、まずは、盛田に相談しろ”というくらい、アメリカ側から信頼されていたという。たとえば、かつて、アメリカの保険会社プルデンシャル生命が日本に進出しようとして、彼に会談を申し込んで、できたのが、ソニー生命という。まさに、虎穴に入らずんば虎児を得ず、これがソニーのグローバル企業の基盤となっていることは間違いないだろう。

そして、最後は、大賀典雄の”ブランド”、もともと、バリトン歌手を志した大賀は、人一番、洗練されたモノに対する執着が強かった。ソニーの名前はもともと”ソニー坊や”から来ていて、キャラクター自体は全然洗練されていない。そこで、大賀がロゴデザインなどを手掛け、ソニーの洗練されたブランドイメージを築いたと。

ほぼ家族同様の3人が、それぞれ、技術、外交、ブランド、それぞれ補完しながら、新しい領域を開拓する、やはり、この良い意味での家族経営がソニーの原動力になっていったんだと思いました。21世紀のソニーはといわれたら、徹底的に技術を突き詰める人、世界の果てだろうと一人で開拓する人、そして、洗練されたブランドをつくる人、こうした”人”の結集が次のソニーを生むのかもしれない。

顧客を獲得する 独立ノウハウ

7月 20th, 2013 | Posted by admin in 独立 | 経営 - (顧客を獲得する 独立ノウハウ はコメントを受け付けていません)

かのピーター・ドラッガーはこう言っている、”事業の目的は、顧客を創造すること”と。

独立しようが、企業にいようが、一番、難しいけど、知恵の絞りがいがあるもの、それは顧客を獲得することだと思う。

これがわかったら誰も苦労しないし、自分も教えてもらいたいくらいだ。とはいうものの、独立という観点では、いままで見てきた経験だと、顧客の獲得には、1.既存の顧客および2.新規顧客の2種類があると思う。

既存の顧客

蕎麦屋・ラーメン屋に”のれん分け”という風習がある。たとえば、ある若者がラーメン屋を開業することを目指すとする。その場合、有名店・繁盛店で修業するというのは一つの手段だ。やっぱり、繁盛店は、何かしらお客さんの琴線に触れるものがあるから、繁盛するわけであって、たとえ、皿洗いといった下っ端の仕事であっても、次第に様々な仕事をこなすことで、繁盛店のノウハウをある程度身につけることができる。そして、親方がみても一人前になったら、”のれん分け”という形で、自分の店をもつ。

 この場合は、新しくビジネスをはじめるわけだけど、リスクという点ではそれほど高くない。たとえば、美容室の場合、担当が決まっていて、”いつものカットでお願い”といえば、だいたい対応してくれる。だから、その担当者が自分で開業すれば、その担当が開業した店にいく。つまり、店に価値があるのではなくて、人に価値があり、最初の資金繰りは大変かもしれないけど、安定したお客さんがいれば、なんとかなる場合が多い。自分もどちらかといえば、このタイプに当てはまる。

 これは企業でも同じだと思う。たとえば、IT企業の場合、大企業であれば、ほとんど、自分でプログラミング・システム構築をすることはなく、むしろ、進捗管理などのプロジェクトマネージャー的な役割が多い。そして、実際のプログラミング・システム構築は、協力会社と呼ばれる会社に外注する。プロジェクトマネージャーにしてみれば、重要なのは、進捗通りプロジェクトが進行すること。だから、かつての協力会社でイケてる社員が自分の会社を立ち上げたとしても、きっちり仕事ができれば、その新会社に発注する価値はある。

[ad]

新規の顧客

 もう一つの顧客獲得は、新規。いってみれば、何もないところから、自分たちで新しいモノを生みだし、そして、全く面識のない顧客を獲得する。

 これは、既存の反対で、リスクが高い。たとえば、いまでこそ、クックパッドは、押しも押されぬ日本ナンバーワンのレシピサイトだけど、サイトをオープンしたのは、10年近く前の話。そして、10年前にクックパッドを知っていた人は、ごくわずかにすぎない。もちろん、素晴らしいサービスだから、今のクックパッドがあるわけだけど、たとえ、ネットであっても、口コミが口コミを誘って、国民的なサービスになるまでには、それなりに時間がかかる。5年間、やっても芽が出なかったということで、サービスをやめた自分の知り合いもいる。

 このようにゼロからサービスを立ち上げて、新しい顧客を生みだすのは、本当にうまくいくかどうかわからないので、リスクが高い。でも、リスクが高い分、国民的サービスとして、日本国民、ひいては、世界から認知されれば、そのリターンは計り知れない。

既存か新規か?

 既存の顧客を獲得するか、それとも、新規の顧客を獲得するか?これはどちらが良いかは、判断しにくい。

既存の場合、たしかに、ビジネスとしては”カタい”、ただし、たとえば、上述のIT系の場合であれば、お客さんから言われた仕事をこなす”受託屋”になりがち。受託屋自体は悪くはないけど、ずっと、受託一本だと、発注先の業績に依存してしまうところがある。お客さんの業績が悪くなると、まず、最初にカットするのが、外注費。外注を内製化に変えれば、その分コストカットできるので、最初にコスト削減で手をつけるところになる。

 そういう意味で、自分でサービス・製品をつくって、新規の顧客に提供する方が、”受託屋”特有のリスクはない。でも、その立ち上げが茨の道であることは触れたとおり。

 これって結局のところ、”リスク”なんだと思う。投資と同じで、人によって、とれるリスクは異なる。低いリスクしか取れないひともいるし、高いリスクを取りたい人もいる。というわけで、独立したから、ローリスクで既存のお客さんを活かせ、というのはナンセンスだし、逆もまたしかりと思うのです。

[ad]

横浜マリノスにみるJリーグの経営学

7月 18th, 2013 | Posted by admin in Jリーグの経営学 | 経営 - (横浜マリノスにみるJリーグの経営学 はコメントを受け付けていません)


先日、横浜マリノス 2012年度 決算をFacebookに投稿したら、とても有益なコメントをいただいたので、シェアさせていただきます。

マリノスの2012年度決算

Jリーグのクラブというフィルターなしに、1企業として横浜マリノス(株)の決算内容を見ると、危機的な内容。まず、貸借対照表(B/S)の純資産の部が、▲16.7億円と大幅マイナス。赤字が累積し、その累損赤字が資本金を上回る、いわゆる、債務超過状態。債務超過=倒産というわけではないものの、少なくとも、銀行に融資をお願いしても、銀行側は貸し倒れのリスクは高いと判断して、おカネを貸してもらえない可能性が高い。

 くわえて、損益計算書(P/L)では、営業収益(売上高)37.1億円に対して、営業費用が42.1億円、主に人件費の負担が重く、営業損失は▲5億円の赤字。キャッシュフロー計算書は、開示されていないけど、おそらく、営業キャッシュフロー(本業から得られる1年間の現金収入)も赤字、すなわち、ビジネスをすればするほど、キャッシュが流出し、赤字がかさみ、債務超過の状態に歯止めがかからない。

債務超過の背景

普通の企業として、横浜マリノスを見た場合、上記のような危機的な状況であるものの、”Jリーグのクラブ”という点からみれば、赤字になること自体はおかしいことではない。その理由は、やはり、収益機会が少ないこと。普通の企業の場合、土日を除く52週間(1年)x5日=260日間、生産・営業・販売活動をするチャンスはあるけど、Jリーグの場合は、リーグ戦34試合、カップ戦6試合、天皇杯1試合=41試合(*1)、プロ野球の場合、144試合なので、試合数にすればプロ野球の方がJリーグより3倍も多い、1試合あたりの入場料収入が同じであれば、当然、試合数の多いプロ野球の方が収入も多い。くわえて、横浜マリノスの入場者数は、自社努力によって、2012年度は増えているものの、Jリーグ全体の入場者数が減っている。というわけで、プロサッカー選手を維持するための人件費 > 入場料・広告収入、すなわち、赤字になると。

(*1)ただし、カップ戦6試合は予選リーグのみなので、決勝トーナメントで優勝すると+5試合、天皇賞についても優勝する場合は、2~7回戦までの6試合なので、最大は34 + 11 + 6 =51試合、ただし、アジア・チャンピオン・リーグに出場する場合を除く

[ad]

ただし、他クラブと横浜マリノスが違うところは、横浜マリノスの場合、経営の独立性を上げていること。横浜マリノス嘉悦朗社長へのインタビューによれば

親会社にクラブの赤字を補填してもらって、財務を表面的に穏やかに見せるようなことを僕はやりたくはない。そもそもマリノスの社長に就任したとき、日産から「赤字補填なしでやっていけるように改革してくれ」と言われていました。どこまで自力でやれるか、本気でチャレンジしたいんです。経営の透明性ですよね。

と経営の透明性を確保すべく、他のクラブが親会社からの赤字補填があるのにたいして、横浜マリノスの場合、親会社である日産からの赤字補填をしない経営方針のために、累損が膨らむ図式となっている(キャッシュフローでいえば、営業キャッシュフローは赤字だけど、財務キャッシュフローがプラスなので、フリーキャッシュフローがトントン)。

親会社への依存

 閑話休題。万年赤字のJリーグクラブが累積赤字を解消するために、親会社に頼る、この図式は、自分にはかなり見覚えがある風景。とくに、自分はIT子会社(親が大手企業で、その大手企業向け情報システムの開発・運用をする)と付き合うことがおおくて、その多くは、Jリーグクラブと同じ。すなわち、親会社の情報システムのメンテナンスが中心なので、当然、赤字が続く。親が体力があるうちは問題ないけど、いざ、体力が落ちると、外販(親以外の会社にシステム・ソリューションを販売)などの形で、”親離れ”が必要になる。でも、この”親離れ”ができない企業が結構多い。まさに、子会社にとっては、”親がなんとかしてくれる”と思っているからだ(もちろん、こういう会社だけではなくて、きちとん、親離れできているIT子会社もたくさんあります)。

クラブライセンス制という黒船

 やはり、累積赤字を親会社が補填するというのは、あまり健全でない。クラブも1企業である以上、フリーキャッシュフローをプラスにして、きちんと、税金を支払うのが企業の役割の一つだと思う。こうしたこともあり、2013年度から導入されるのが、「クラブライセンス制度」、もともと、ドイツにおいて各クラブのリーグ参加資格をチェックするために生まれた規格で、今年からJリーグクラブにも適用される。様々な規則があるけど、ここで関係するのは、財務基準。Wikiによれば、Jリーグのクラブとしてプレーするためには、以下の財務基準を満たす必要があり、満たせない場合は、下位リーグであるJFL等への降格になる可能性がある。

財務基準
・年次財務諸表(監査済み)を提出し、Jリーグの審査を受けること(A基準)。その際、3期連続の当期純損失(赤字)を計上していないこと(2012年度-2014年度の3年間以降で算定)および債務超過でないこと(2014年度から算定)が必須条件となる
・移籍金や給与の未払いが生じていないこと(A基準)

3期連続の当期純損失もあるけど、やはり、論点は、何度か指摘している債務超過でないことだろう。結論として、今回取り上げる横浜マリノスについては、親会社の補填なくして、債務超過の解消は不可能だろう。そして、親の援助なくして、黒字をキープできるクラブはかなり限られると思われる。

で、どうするか?

 こうした点を踏まえると、Jリーグクラブの経営はかなり難易度が高い。財務リストラとして、人件費をさらにカットすれば、選手のモチベーションが下がる→チームの成績が落ちる→入場料・広告収入が減る→赤字がさらに拡大、とネガティブスパイラルに陥る可能性が高い。だからといって、いつまでも親にたよれるかと言えば、IT子会社の例のように親会社がつねに体力があるとは限らない、まさに袋小路状態だ。

 で、どうするか。一つは、日本の製造業のように、海外に展開するのはあると思う。Jリーグはアジアを目指す ~生き残りをかけた600億円市場 獲得戦略~のように、アジアに進出して、広告収入を増やすのは一つの手だと思う。”アジアでサッカーは流行らない”といったら終わりで、やはり、やるしかないと思う。

おわりに

Jリーグの経営については、ずぶの素人であった自分に、有益なコメントを下さった皆様ありがとうございました、ここに御礼申し上げます。とくに、大学の研究室の先輩である土本 康生さんからは、一筋縄ではいかないJリーグの状況についてとても有益なコメントをいただきました、この場を借りて感謝の意を表します。

追記:サッカーの総試合数について、カップ戦、天皇杯、それぞれ優勝した場合のケース最大51試合を追記しました。
[ad]