知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く

2月 26th, 2016 | Posted by admin in 日々の思い - (知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く はコメントを受け付けていません)

「知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く」
日経BP田島様から御献本いただきました、ありがとうございました。

この本は、知財戦略であるものの、単に知財という枠を超えて、テクノロジーをどうビジネスに活かすかという視点を提供してくれています。

たとえば、第1章 技術のコモデイティ化と知財・事業戦略 において、シャープは太陽光パネルで5000件もの特許を保有しているものの、
わずか10年の間にシェアは90%から10%まで低下、その要因として、こう指摘する。

シャープが保有する5000件の特許はビジネスに何の貢献もなくなったのか。おそらく、高性能品である
変換効率20%の太陽光パネルを製造するためには、この5000件の特許のうち少なくとも一部を利用しなければならないだろう。
つまり、変換効率20%という高性能品は、今でもシャープだけが製造できるのかもしれない。しかし残念なことに、
そこに強みがああっても、シェアの増大につながらない。(p22)

やはり、どんな重要な特許を持っているからといっても、ニッチ市場(変換効率20%の太陽光パネル)においてはシェアを拡大できない。
だからこそ、「10年後、20年後に到来する社会を見据えて、どのような市場がうまれ、どのような技術が必要となり、どこまで
先行して技術開発投資と知財化をするのか、という研究企画的な発想が重要になる。」(p45)と指摘する。

すなわち、単に知財化するというのではなく、将来の事業を見据えて技術投資そして知財化があるべきというのが
本書の趣旨であり、第2章以降では、オープン&クローズの戦略論、第3章 特許の権利行使と知財ファンド、
第4章 知財の取引と新たな紛争、第5章 事業と知財の一体化、第6章 特許のコストとリターン、
第7章 グローバル特許の取得と訴訟戦略、第8章 グローバル知財管理とタックス戦略、とグーグルなどの
海外企業の特許戦略などを踏まえながら、事業と知財との一体化をとく。

本書は誰が読むべきか、正直、後半のグローバル知財、タックス等の話は、かなり専門的な話が多いので、
知財についてより理解を深めたい専門家、知財部に適していると思う。一方で、前半部分については、
知財という枠をこえて、どう技術をビジネスに活かすか、MOT(Management of Technology)的な視点であり、
MOT的なテキストとしてよいかなあと思いました。

休むも仕事

2月 17th, 2016 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (休むも仕事 はコメントを受け付けていません)

何がきっかけか覚えていないのですが、たぶん、終戦の詔書を一部加筆し、平成という元号を考案したあたりかと、昭和の碩学 安岡正篤師の著作を折あるごとに読んでいます。

 彼の記述でよく登場するのが、「閑に耐える」、すなわち、閑に耐え、閑に安んじ、閑を楽しみ、閑を活かすような人が偉い人だとあり、なるほどなあ、と思いました。

 で、今日(2月16日)の毎日新聞のニュースで「<働かない働きアリ>集団存続に必要 働きアリだけは滅びる」というニュースにいたく感じ入りました。アリの世界は、8:2の法則で、働くアリが8割、働かないアリが2割。そして、この働く8割のアリだけをピックアップしても、かならず、働かないアリがでて、これが「謎」だったと。で、北海道大学等の調査によると、最初よく働いていたアリが休むようになると、働かなかったアリが動き始めることを確認したと。ま、言ってみれば、サッカーにしてもどんなスポーツにしても控えが必要ということかもしれない。

 と考えると、働かない=「閑に耐える」というのは、否定すべきことでもなく、むしろ、閑を活かす人が偉いのかもしれない。ま、株式相場でも、「休むも相場」なんてよくいいます。そう、90分フル出場しなくてもいいかもしれない。

 というわけで、結論、Take it easy、気楽にいきましょう、休むも仕事。あわてないあわてない。一休み一休み。

<働かない働きアリ>集団存続に必要 働きアリだけは滅びる

【連載】世界 ハイテクウオッチ Apple Musicで「瀕死」のパンドラ、巨人に囲まれても活路を見出す「奇跡の一手」とは

2月 5th, 2016 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (【連載】世界 ハイテクウオッチ Apple Musicで「瀕死」のパンドラ、巨人に囲まれても活路を見出す「奇跡の一手」とは はコメントを受け付けていません)

Screenshot of www.sbbit.jp

連載中の世界ハイテクウオッチにパンドラの記事を寄稿させていただきました。

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ
Apple Musicで「瀕死」のパンドラ、巨人に囲まれても活路を見出す「奇跡の一手」とは
http://www.sbbit.jp/article/cont1/30719

ロバを売りに行く親子

1月 20th, 2016 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (ロバを売りに行く親子 はコメントを受け付けていません)

先日、たまたまブックオフの100円セールで売っていたソニー出井さんの「非連続の時代」を読みました。この本が出たのは2002年です。

 そこから10年以上経過した今からみても、彼が「非連続の時代」というべきデジタル時代(音楽がデジタルになるなど)をきちんと見据えて、戦略的思考なら負けないと本書で自負しているだけ先を読むことにかけては、すばらしいと思いました。

 何かのインビューで読んだのだけど、彼は事業部長のときから会社の将来をレポートにまとめて毎年マネジメントに提出したという。もちろん、周囲の嫉妬・反発もあったけど、そのたびにロバを売りに行く親子の話をしたという。
 
 ロバを売りに行く親子は、イソップ童話で、ロバを売るため親子が市場まで歩いているところ、周りから、ロバを歩かせているのはもったいないといわれ、父親は息子をロバに乗せる。そしたら、ある人から、親を差し置いて息子がロバに乗るのはどういうことだ、ということで、二人でロバにのる。で、2人でロバに乗ったらロバがかわいそうってことで、親子でロバを担いで歩いたら、ロバが橋から落ちて結局何も得られなかったと。

 ま、何か新しいこと、人がやっていないことをやろうとすると、周りからいろいろという。だからといって、それを100%鵜呑みにすると、結局、何も得られることがない。だから、これだけだと思うことに信念を貫くしかない。彼が伝えたいことはそういうことなんだと思う。自分もぶれることがよくあり、ロバに売りに行く親子は身に沁みます。
 
 

たまたまという幸運

12月 30th, 2015 | Posted by admin in 日々の思い - (たまたまという幸運 はコメントを受け付けていません)

 今年は今日で仕事納めです。

 たしか、昨日の日経新聞の私の履歴書で、大丸の会長がたまたま新幹線で松坂屋のトップと席が隣で、その縁で経営統合につながったという話があり、なるほどなあ、と思いました。

 自分の経験上、こうした「たまたま」は、意外と多いです。たまたま、飛行機が一緒だったり、たまたま、飲み屋で一緒だったり、たまたま、フィットネスジムが一緒だったり、などなど。枚挙にいとまがありません。で、こうした「たまたま」のきっかけで、世の中が変わっていくのかもしれません。

 かつて松下幸之助は、自身が面接をする際、学生に「運が良いか?」を聞いたと言います。そして、運が悪いと答えた学生はどんな高学歴でも不採用にし、運が良いという学生を残したという。たぶん、この「運が良い」と「たまたま」は似ていると思う。やはり、どんな些細なきっかけであっても、「たまたま」の機会を重視して、それをチャンスにつなげる、それが結果的に運が良いにつながる、ということかと。

 2015年、自分にも「たまたま」を含めたくさんの出会いがありました。そして、もしかしたら、そのたまたまをチャンスにつなげていなかったケースもあったかしれないです。ま、それはそれで仕方ないとして、2016年も些細な出会い、これまでの付き合いを大切にしたいと思います。また、来年もよろしくお願いいたします。

2015年12月30日 長橋 賢吾

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ フィットビットはなぜアップルを上回れたのか? ウェアラブルの隠れた王者の戦略とは

12月 18th, 2015 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (【連載】世界ハイテク企業ウォッチ フィットビットはなぜアップルを上回れたのか? ウェアラブルの隠れた王者の戦略とは はコメントを受け付けていません)

Screenshot of www.sbbit.jp

連載中の世界ハイテクウオッチにフィットビットの記事を寄稿させていただきました。

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ
フィットビットはなぜアップルを上回れたのか? ウェアラブルの隠れた王者の戦略とは
http://www.sbbit.jp/article/cont1/30543

青田買い

12月 15th, 2015 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (青田買い はコメントを受け付けていません)

先日ですが、とても良いお話をお伺いしました。

あるメーカーから、某内視鏡メーカーはすごい、という話です。

 で、何がすごいかといえば、その会社は、将来の医者の卵である、医学部の学生のころから、医学部生向けに内視鏡のセミナー・研修等をやるという。まず、学生のうちから、内視鏡に触れさせ、何ができるかを体験し、それを10年、20年続ければ、結局、そのメーカーを使い続けるしかないと。

これは、いわゆる囲い込み、あるいは、青田買いかもしれないけど、これはこれで理に適っていると思う。

 自分の比較的身近な話では、IPO系もこれに似ている。会社を設立して、産声を上げてから、数年、場合によっては、数十年かけて上場(IPO)するケースがある、確率的には魚の卵が成長魚になるくらいの低い確率。まあ、IPOは会社の「成人式」かもしれない。で、成人式の直前になって、うちのサービス使ってくださいといっても、普通手遅れの場合が多い。

 たとえ、低い確率でも、産声を上げた時から、将来の成人式のために恩を売って、売って売りまくる。これは内視鏡の医学部生の囲い込みと似ているかもしれない。ポイントは、青田買いしたからといって、すべての田んぼが実るわけではない。あくまでも、5年以上で回収を見込む腰を据えた投資だと思う。

そう考えてみると、腰を据えるというのは大事だと思う。そして、長いこと、腰を据えて打ち込んできた会社は強い、そんなことを思いました。

70年前のデータサイエンティスト – 「大本営参謀の情報戦記」

11月 21st, 2015 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (70年前のデータサイエンティスト – 「大本営参謀の情報戦記」 はコメントを受け付けていません)

久しぶりにワクワクしながら本を読むという経験をしたので、忘れないためにも久しぶりにブログ更新です。

「大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇」(堀栄三 文春文庫)という本です。

著書は、戦前の陸軍士官学校を出て、その後、陸軍大学校を卒業して、昭和18年10月 大本営陸軍参謀としてドイツ方面の戦局を収集・分析するいわゆる情報参謀の任につく。その後、ソ連、米国と転じ、米軍がどのような戦術で、どれくらいの規模で、いつどこに上陸するといったアメリカ軍の行軍について、公開情報、これまでの戦法、無線・暗号解読、諜者などのソースを基に多角的に分析、「敵軍戦法はやわり」といった冊子にまとめる。その分析手法について、彼はこう語る。

常に断片的な細かいものでも丹念に収集し、分類整理して統計を出し、広い川原の砂の中から一粒の砂金を見つけ出すような情報職人の仕事であった。(同書p221)

こうした緻密な分析から、マレーの虎と畏怖された山下奉文大将が率いる第14方面軍の情報参謀として、戦局が悪化するなか、米軍のフィリピン上陸の地点について、航空機の経路、無線でのやりとり、米軍の思惑などから、ルソン島西部のリンガエン湾に上陸すると予測し、それが的中。さらには、戦争が長引いていれば、米国は日本本土上陸として、米軍は昭和20年11月に九州南部、志布志湾への上陸を実際に計画(オリンピック作戦)していたが、彼ならびに彼が所属する大本営6課はこれを正確に予測。米軍の行動を的確に予測することから「マッカーサー参謀」と呼ばれた。

様々な情報を多角的に分析、数値化して、次のアクションを予測する、彼は自分の役割について「情報職人」と呼称する、これは今でいえば、データサイエンティストそのものだと思う。というわけで、データサイエンティスト自体は、大昔から存在していたわけで、名前が変わっただけ(情報職人→データサイエンティスト)だと思う。

そして、彼がどう情報を「数値化」したか。彼は、「鉄量」というKPI(Key Parameter Index:重要評価指標)を提示する。というのは、日本とアメリカでは「師団」(軍隊の一方面での作戦を遂行する単位、自分の大雑把な理解では営業、総務、技術を兼ね備えた一つの会社)といっても構成が違うので、同じ土俵で比較できない、だから、どれだけ火力があるか、それを鉄量というKPIで比較。いうまでもなく、鉄用という観点ではいうまでもなく圧倒的に米軍が勝り、彼はこう指摘する。

堀は師団という名称よりも、鉄量(火力)の差を重視していた。ほかの人々は、鉄量は精神力で克服できるという呪術的思考であった。(同書p215)

自分が思うに、これは70年前の過去の出来事と片づけることができない、いまにも通用する教訓があると思う。その一つが、データを活用した経営。データを活用した経営は大事といわれるものの、すべての会社がデータを活用しているとは限らない。自分もここ1年くらいデータサイエンスのセミナーをやらせていただきまして、いろいろな会社のデータ活用事例を教えていただきました。その感じでは、やっぱり、「うちの部門の勘は正しいから、データをつかわなくてもいい」というケースはまだ結構あるようにおもいます、いってみれば、鉄量は精神力で克服できるという発想に近いかもしれない。

ただ、「勘は正しいから、データをつかわなくてもいい」というのは、これはこれで、それほど全否定するべき話ではないと思う。勘というのは長い経験に裏打ちされたものであり、むしろ、データ分析よりも正しい場合もある。ただ、問題は何かというと、まさに、本書で指摘されている戦果の誤認識だと思う。著者は、昭和19年10月、台湾沖航空戦を間近に目撃。

黒板の前に座った司令官らしい将官を中心に、数人の幕僚たちに戦果を報告していた。
「○○機、空母アリゾナ型撃沈!」
「よーし、ご苦労だった!」
戦果が直ちに黒板に書かれる。
「○○機、エンタープライズ轟沈!」
「やった!よし、ご苦労!」
また黒板に書き込まれる。
その間に入電がある。別の将校が紙片を読む。
「やった、やった、戦艦2撃沈、重巡21轟沈」
黒板の戦果は次々と膨らんでいく。
(同書p161)

その後、彼が、暗い海のなかでどうして自分の爆弾でやったと確信しているか、アリゾナの艦型、などを質問しても、あいまいな返事しかしない、結局のところ、戦果を検証せずに、「轟沈、撃沈」と誇張、実際の戦果は、その3分の1、5分の1であったにもかかわらず、その誤った戦果をもとに、次の作戦を立案するため、相手を過小評価してしまう。それが情報なき国家の悲劇の原因であったと筆者は指摘する。

これは意外と今でも多いと思う。やっぱり、ビジネスでもうまくいっていないとき、それを正しく受け入れるのは、難しい。でも、それを正しく現状を受け入れないで、精神論で突破できるの一点張りだと、現状を正しく認識できず、ずるずると泥沼になる。だからこそ、きちんと数量化されたデータをもとに客観的に分析し、次の一手を打つ。これが情報職人、あるいは、データサイエンティストの役割だと思う。そうした点で、客観的な状況を受け入れるための経営陣、トップの度量も必要だと思う。フィリピンの第14方面軍の山下大将は彼に対してこう命令する。

レイテはこれから激戦になるだろう。今後の推移を十分見守らなければならないが、いずれは敵はルソン島に来る。いつ、どこに、どれくらいの敵がくるか、君は冷静に、どこまでも冷静に専心考えて貰いたい。これが大将の君への特命だ。口外厳禁!」(同書p190)

やっぱり、人間だれでも自分の都合が悪い情報はシャットダウンしたいと思う、でも、それをあえてシャットダウンせずに、フェアに判断する、やはり、それはトップの度量だと思う。自分の経験でも、データを使って意思決定する多くの会社は、経営、トップがよい情報、悪い情報、すべてひっくるめて判断する会社が多い。一方で、旧陸軍は、作戦の方針を決める大本営と一言にいっても、その中枢である作戦課が「奥の院」のように単独で作戦を決定し、情報を軽視したところに問題があると指摘した筆者の指摘は、そっくりそのまま、ビックデータ課をつくったところで、それを経営として活用しなければ意味がないという話と同じと思う。

戦後70年、二度とこうした悲劇を繰り返さないためには、やはり、データによるチェック機能というのは、国、国家に限らずとても重要なことだと思う。そんなことを70年前のデータサイエンティストから学びました。

世界ハイテクウオッチ ユニコーン企業とは?

11月 14th, 2015 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (世界ハイテクウオッチ ユニコーン企業とは? はコメントを受け付けていません)

Screenshot of www.sbbit.jp

連載中の世界ハイテクウオッチにユニコーン企業の記事を寄稿させていただきました。

【連載】世界ハイテク企業ウォッチ
ユニコーン企業とは何か?Uber、Airbnbなど評価額ランキング30社にみる高評価の理由
http://www.sbbit.jp/article/cont1/30329

児島虎次郎という「中の人」

9月 20th, 2015 | Posted by admin in 日々の思い | 長橋のつぶやき - (児島虎次郎という「中の人」 はコメントを受け付けていません)

 シルバーウィークは岡山・倉敷にいきました。そして、とても印象に残ったのが倉敷です。倉敷は、その昔、出張でいったことがあるけど、市内をちゃんと見るのがはじめてで、明治・大正の佇まいを残す美観地域のすばらしさは固よりたくさんの発見がありました。

 とくに、印象に残ったのが大原美術館です。大原美術館は、いまのクラレの創始者でもある大原孫三郎のコレクションが展示してある美術館。この美術館の何がすごいかというと、自分の理解では、フランスの印象派のコレクションは多分日本一で世界的にもトップクラスのレベルだと思う。

 で、なぜ、倉敷の美術館が印象派のコレクションを集めることができたか?それは、大原孫三郎の盟友児島虎次郎によるところがおおきい。東京芸大を2年スキップするほど優秀な成績で修了した児島は、大原の支援をえて、20世紀のはじめにフランスに留学。そこで、当時、まだそこまで有名ではなかったモネなどといったフランスの印象派の画家と積極的に交流し、そのなかで、絵を買い付けたという。いわば、彼は印象派の「中の人」といえるかもしれない。

 そして、「中の人」だからこそ、モネ、ルノワール、ゴーギャン、ピカソ、さらには、500年前の「印象派」ともいえるエル・グレコの受胎告知といった「日本にあるのが奇跡」と言わしめるほどの世界的なコレクションになったと。

 ちなみに、これは、ベンチャーキャピタルあるいは投資ビジネス全般に言える話で、「中の人」になることはとても重要。「中の人」でとれる情報、案件が全然違うと思う。自分はVCにいたことはないけど、彼らが口をそろえて人脈が大事というのは、この「中の人」にあると自分では思っています。かくして、大原美術館は、児島虎次郎という「中の人」の努力によってはじめて成立した奇跡といえるかもしれない。

 もう一つの発見は、印象派とキュビスムは連続性があるということ。自分の理解では、印象派はデータサイエンスでいうところの「主成分分析」、すなわち、現実に見えているものをそのまま絵にするのではなく、空の青、池の水といった重要なパラメータだけを抽出することで、より世界を色濃く表現する。そして、そのパラメータを抽出するというアプローチをさらにシェープしたのがキュビズムと自分は理解しました。

 ちなみに、この話はイヤホンガイドではじめて知りました。こういう情報があるのとないのとでは全然理解が違うなあとおもいました。そして、次はオルセーに行きたいなあとおもいました。先達はあらまほしけれですね。

ohara