量子アニーリングマシンによる量子シミュレーション

12月 25th, 2018 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (量子アニーリングマシンによる量子シミュレーション はコメントを受け付けていません。)

前エントリーにつづいて量子コンピュータの話です。ご縁があって、今年9月に「図解入門 よくわかる 最新 量子コンピュータの基本と仕組み」を書かせていただき、おかげさまで重版をかさねました。

 量子コンピュータの実現方法は、量子ゲート方式と量子アニーリング方式があり、この本では前者の量子ゲート方式が汎用化という点で今後発展するのではないかという内容です。で、今月の「数理科学2019年1月号 発展する物性物理」の特集で「量子コンピュータと量子アニーリングマシンによる量子シミュレーション」(関 優也・川畑 史郎(著)、p40-46)が興味深い内容でした。数式を使わずして説明するのが自分のモットーなので、若干、不正確なところもあるかもしれませんが、だいたい要点は以下です。

・量子アニーリングは最適解、すなわち、目的の状態(基底状態)を得るためにハミルトニアン(物理量)を構築する
・この基底状態を求めるために量子断熱計算を利用する
・量子断熱計算は、状態が量子断熱時間が発展するという条件で基底状態にたどりつくことができる
・この量子断熱時間は、断熱定理により見積もることができる
・で、量子断熱計算は、ある状態からある状態へ計算複雑性を維持しながら変換できるので、上記の量子ゲートと量子アニーリング、別々ではなく、量子アニーリングに由来する万能量子断熱計算によって量子ゲートに近いモデルが実現できる
・この万能量子断熱計算をする際に、何番目のゲートが作用したかをクロックレジスタ(アンシラ量子ビット)が必要
・このアンシラ量子ビットは5次の項で構成されることが知られており、これを5-localハミルトニアンと呼ぶ
・5-localハミルトニアンを実現することは難しいものの、これをハミルトニアンガジェットという手法によって2-localハミルトニアンまで次数削減できる

ざっくりとした理解では、量子アニーリングというアナログ的な手法で量子ゲートというデジタル的な手法に変換するアプローチと理解しました。あくまで理論的な話で、今後実装というフェーズだと思います。で、これ以外にも本書3-3節で取り上げた量子シミュレーションの手法もいくつか紹介されています。

量子ネットワークに思う

12月 2nd, 2018 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (量子ネットワークに思う はコメントを受け付けていません。)

 今年の9月に「図解入門 よくわかる 最新 量子コンピュータの基本と仕組み」という書籍を上梓のこともあり、量子コンピュータの進歩に興味を持っています。

 現在のコンピュータ(古典コンピュータ)は70年前は真空管をつかって計算していましたが、トランジスタ(半導体)によって飛躍的に発展しました。量子コンピュータもいまは超伝導方式などがありますがノイズが高い状態でいわば真空管で計算している状態です、どれくらい先かはわかりませんが、量子コンピュータの「トランジスタ」の登場によって、飛躍的に進化すると思っています。

 そうしたなかで、オランダのUTデルフトの量子コンピュータ研究チームQuTechが量子ネットワークについて興味深い指摘をしています。日本語では@ITが書いてますちなみに、10年近く前ケンブリッジでポスドクしていた際、UTデルフトと交流があって、一度、この大学に訪問しました。デルフトは本当に大学の街という感じで、いい街でした。

https://qutech.nl/qutech-researchers-put-forward-a-roadmap-for-quantum-internet-development/

量子ネットワークは、量子現象を利用したコミュニケーションです。で、量子現象は、ザックリ言えば、計算につかう量子ビットの位置が確率的にしか決まらないことで、この現象を利用して、鍵(量子鍵)を配布すれば、再現性がないのでセキュアな通信を実現できるというコンセプトです。コンセプト自体は、40年以上前から提唱されていましたが、実現のハードルが高い技術でもあります。

 で、この量子ネットワーク、書籍にも書いていますが、国によって温度差があります。たとえば、中国では量子ネットワークをインターネットにつぐ次のインフラとして北京から上海への光ファイバーを敷設した量子ネットワーク、さらには衛星通信(衛星、宇宙の場合は、地上にくらべてノイズが少ないので、量子ネットワークの実現のハードルが低いのもあります)まで展開しています。一方で、グーグルは、量子ネットワーク、暗号はニーズがないということで、どちらかといえば、クラウドと量子コンピュータの融合を実現しようとしています。

 もどって、UTデルフトの量子ネットワークのロードマップですが、得てすれば何でもできると思われがちな量子コンピュータ・ネットワークをステップをおってデプロイしようという点はすばらしいアプローチだと思います。とくに、量子ネットワークの最大の特徴であるエンタングルメント(もつれあい)、複数の量子ビットが場所を隔てても同じ状態をキープできる、について、現状の技術では限度があるので、ロードマップとして定義するのは現実的なアプローチかと。

 今後、量子コンピュータはまだまだ動きがあると思いますので、ウオッチしていきたいと思います。来年の1月にセミナーもやります。

https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC190103.php