2025年 読んでよかった5冊

12月 29th, 2025 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (2025年 読んでよかった5冊 はコメントを受け付けていません)

 毎年、12月の最後に1年で読んでよかった本を紹介しています。2019年から毎年読書メーターでカウントしていて、今年は91冊、去年が93冊、生活のリズムはかわらないので、だいたい同じ感じかと、累計で747冊になりました。ここ最近の状況としては、やはり、電子化が進んでいて、書店での偶然で出会いがなく。面白い本を見つけるには、情報を取りに行かないといけないように思います。その中で読んでよかった5冊です。

https://bookmeter.com/users/814464/bookcases/12093006?sort=book_count&order=desc

1.国宝 上下 https://amzn.to/4jkrLk8

 やはり、今年は、「国宝」の1年だったのではないでしょうか。自分は映画を観て、原作を読みました。ややネタバレですが、原作だと喜久雄、俊介につぐ第3の主人公ともいうべき徳次が最後までイイ役を演じてますが、映画だと長崎編で終わっていたりと、時間制限もあるのでだいぶ端折っています。ただ、それを補って余るのが歌舞伎の映像美で、こういう風に舞台裏から歌舞伎が見えるんだ、と思わせる映像が素晴らしく、くわえて、喜久雄の吉沢亮、俊介の横浜流星の演技も圧巻でした。という点で、映画版も原作に劣らない、いや、原作を凌ぐ稀有な作品だと思いました。最近、洋画がだらしないのか、邦画のクオリティが上がっていますよね。国宝しかり、「鬼滅の刃」無限城編 」第一章 猗窩座再来」も素晴らしかったです、「35年目のラブレター」の原田知世のいつまでも変わらないっぷりも瞠目でした。国宝は、もう、外国賞といわず、アカデミー作品賞で良いのではないでしょうか。

2.潮音 1~4 https://amzn.to/4b9KCwa 

 自分のなかで「国宝」に負けず劣らず印象に残ったのが「潮音」です。宮本輝は、もともと好きな作家で、今のTBS日曜劇場のドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」の元祖というべき「優駿」、完結まで30年近くかかった自叙伝的な大河小説「流転の海」と読みました、「流転の海」は、ラストが辛かったです。で、今回、「潮音」は、初の歴史小説ということで、1巻は買ったものの、長らく積読状態でした。が、読み始めたら止まらなく、久しぶりに電車を乗り過ごす経験もしてしまいました汗 この本は幕末から明治にかけての富山の薬売りの川上弥一の物語です。で、これは単なる富山の薬売りの話ではなく、富山で薬を製造するためには、中国清から原料を輸入する必要があり、その輸入に対して薩摩藩が琉球を通じて抜荷(密輸)をするという富山藩、薩摩藩での密約がありました。というわけで、この物語は、富山の薬売りという話だけではなく、薩摩藩からみた幕末・明治の動乱の物語であります。

3.対馬の海に沈む https://amzn.to/4aGBgYN

 著者は、長年、JAを取材していて、そのなかで、JA対馬でライフアドバイザー(LA)をしていた西山氏が全国のLAでもトップクラスの営業力を誇っており、トップLAが一堂に集まる「LAの甲子園」でいつも表彰されていて、なぜ、過疎化が進む対馬で全国でもトップ営業になれるのか疑問に思っていたところ、西山氏が車ごと対馬の海に飛び込みました。で、このカラクリは、「自作自演」で、母親の生命保険営業で獲得した顧客を受け継ぎ、その顧客に対して、JA共済を契約し、台風が来たら虚偽の被害届を出して保険金を申請するということを繰り返していたそうです。もちろん、これは本人の意識もありますが、対馬というクローズな村社会で「見て見ぬふり」をしたことも被害を大きくしたと筆者は指摘します。今年のフジテレビの不祥事も「見て見ぬふり」をした話でもあり、コンプライアンス体制というか、悪いことを悪いと判断する組織体制、仕組みも大事だと実感しました。

4.ベルリンフィル https://amzn.to/49bh7aK

  ベルリンフィルは、いまでは、世界最高峰のオーケストラですが、1882年設立された当時は、ドイツにある地方のオーケストラで、会社で言えば、生まれたてのベンチャー企業でした、最初は経営が安定せず、いつも資金不足に悩まされましたが、1900年代あたりから定期演奏会にくわえて、国外演奏会を開催するなどマネジメントを強化し、次第に経営が安定しました。そして、第2次世界大戦中ナチスドイツに政治利用されたフルトヴェングラー、戦後、アメリカの民主化に政治利用されたヘルベルト・フォン・カラヤン、という2名のスター指揮者の登場で世界最高水準のオーケストラにまで育ち、今に至るという話です。二人のスター指揮者は、毀誉褒貶というか、やりにくさもあったようで、とくにカラヤンは日本ではソニーと一緒にCDの規格を作った巨匠のイメージがありますが、つねに独善的な行動をしていて、勝手にザルツブルク音楽祭を作ったり、アカデミーを作ったり、団員は辟易していたそうです。今年は、7月5日にベルリンフィルの野外コンサート「ヴァルトビューネ」の世界初海外公演を聴く機会もありましたが、この「ヴァルトビューネ」もカラヤンの独善的な行動に団員が嫌気をさして、勝手に野外コンサートを企画した結果だそうです。

5.戦闘力 なぜドイツ陸軍は最強なのか https://amzn.to/3NligoL

 第二次世界大戦中、ドイツと米国の陸軍を分析していて、圧倒的にドイツ軍のパフォーマンスがよく、なぜ、ドイツ陸軍が最強なのか?という話です。なぜ、ドイツ陸軍が最強なのか、筆者は「任務指向型指揮制度」にあると指摘します。「任務指向型指揮制度」は、自分の理解では、中隊長に権限を与え、指揮官は、自らの部下にどうすべきではなく、何をすべきかを命じるように訓練され、全体の枠組みの範囲内であれば、部下は自分で計画して実行する裁量が与えられる制度です。一方、アメリカ軍の場合は、こうした裁量制度はなく、人間を機械のように扱う科学的手法を採用しており、兵士が不足したら補充するという機械的なオペレーションが、結果として戦闘力の差を生んだという話です。これは会社でもありますよね。「何をすべきか」という共通な目標を設定した上で、権限委譲をすることで、組織の力が活きるのは、古今東西共通な話でもあります。