歴史に学ぶ強いチームの作り方

1月 29th, 2023 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (歴史に学ぶ強いチームの作り方 はコメントを受け付けていません)

さて、最近読んだ本「真珠湾攻撃総隊長の回想 渕田美津雄自叙伝」でいろいろ思うところがありました。著者の渕田美津雄中佐は、太平洋戦争の発端となった真珠湾攻撃での航空隊の総隊長で、当時は海軍上層部から大規模な航空戦の指揮をできるのは彼しかいないという逸材だったそうです。

 もちろん、戦争というのは悲惨なものであり、かつ、日本国憲法第9条では戦争を国際紛争の解決する手段として永久に放棄しており、もう繰り返すことはないと信じていますが、一方で、チームワークという点では今の我々にも学ぶことが多そうです。

 真珠湾攻撃が計画された1940年初めは航空戦の黎明期であり、複数の空母を使った大規模な作戦はほぼなかったようです。とくに、飛行機の場合、難しいのは3次元&飛行時間が限られていること。車両の場合であれば、「この場所に集合」といえば、だいたい間違いないですが、航空機の場合、複数の空母から、「この場所に集合」だと、3次元の決まった場所の特定から、飛行時間が限られているため効率的に発着艦しなくてはいけないなど高い練度が要求されたそうです。そういうこともあり、真珠湾攻撃以前では、第一航空戦隊は空母赤城のみ、第二航空戦隊は空母蒼龍と航空部隊はバラバラに運用されていました。ただ、彼は早くから航空威力はマス、すなわち、集団で攻撃することに価値があることを見抜いていて、全航空部隊を集中、そして、統合した航空部隊を徹底的にトレーニングしたそうです。

 もう80年以上前の話ですが、このあたりのトレーニングの話は、昨年公開された映画「トップガン マーヴェリック」に近いかもしれないですね。この映画では、ならず者国家の濃縮ウランプラントを破壊すべく、急勾配の山を登り、谷底のプラントを破壊するミッションをこなすべく、日々トレーニングする姿が描かれています。ただ、決定的な違いは、やはり、数でしょうね。「トップガン マーヴェリック」の場合は、たしか、2機×2機の4機でした、真珠湾攻撃の場合は、空母6隻で、2段発進、第一波は189機、第二波は171機、合計、360機の大編隊、当時と今の技術の進歩はあるでしょうが、いずれにしてもチームとしてのまとまりが要求されます。

 で、チームワークという観点では、こうした大規模な編隊を一糸乱れように統率し、目的を達成することは、とても難しいことだと思います。たとえば、この作戦のなかで難しかったのが、真珠湾に碇泊している艦船へ魚雷を発射する雷撃だったそうです、真珠湾は水深が12mと比較的浅い海で、当時の魚雷は水深60mを想定していたため、魚雷の改良にくわえて、水面ギリギリまで急降下して雷撃する必要があり、鹿児島県の錦江湾を真珠湾に見立てて何度も何度も訓練を重ねたそうです。

 ここまでの練度を上げるのは相当大変とは思いますが、会社あるいは組織でも似た話でもありますよね。航空部隊の場合、いざ作戦開始となったら司令官が一つ一つ指示するヒマはないですね、実際、渕田大佐は一番機で出撃しましたが、そのメインな役割は戦果確認でした。なので、それぞれのメンバーが目標を共有して、自律的に行動せざるをえない、そして、こうした最強のチームを作るためには、優れたリーダー、絶え間ないトレーニング、目標の共有が欠かせなく、優秀な企業にも共通してみられる傾向ではありますね。ただ、これを常に維持するはとても難しいと思います。

 維持するという点では、作戦指導部は、真珠湾攻撃が上手くいきすぎたところもあり、慢心が芽生えたのでしょうね。その後、ミッドウェー海戦を契機に百戦錬磨のパイロットもどんどん失われ、敗戦となります。そして、渕田大佐は、理不尽な戦後処理に疲れ、引退するも、キリスト教に改宗し、布教という第二の人生を送ります。 歴史に「タラレバ」はありませんが、学ぶことは多いと思います。それは、強いチームのつくりかた、リーダーが明確なビジョンを掲げて、そのためにトレーニングをして、チームが同じ方向に向かって目標を実現する、これは今でも学ぶ点がありそうです。

教材づくりという目標

1月 3rd, 2023 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (教材づくりという目標 はコメントを受け付けていません)

あけましておめでとうございます、といっても、もう正月も3日になってしまいました、かつ、新年の決意表明とか目標とか、あまり達成した記憶がないので汗、基本はこの手のヤツはやらないのですが、自分のなかで、これからもやりたいことは何かな、と新年つらつら考えていたことです。

 基本、新しいことを学ぶことが好きなので、新しい分野のチャレンジ、会社をもっと強くしたい、などなどいろいろあるのですが、そのベースが教材づくりにあるのかなと思いました。自分と教材づくりとの付き合いは長くて、たしか最初は、20年くらい前に、シスコのCCNA向けのネットワーク研修のための教材づくりですね、TCP/IPの基本・応用を学んで、CCNAを取得するみたいなプログラムで、2008年に「これならわかるネットワーク」(講談社ブルーバックス)にもなりました。その後、NHK教育テレビ番組「ITホワイトボックス」などに関わらせていただいたのは今では懐かしい思い出です。

 そのあとは、たしか2015年くらいに、今は亡きインプレス顧問の故佐藤邦夫さんから「ナガハシ、お前大学のとき統計やっていたよな? 機械学習セミナーの講師やってくれ」という無茶ぶりもあり、まあ、たしかに大学というか証券会社のアナリストのときに統計っぽいことをやっていたので、2016年くらいから機械学習・ディープラーニングの教材づくりを開始しました。ただ、開始当初は、ヒドイもので、かなりクレームがありましたが、受講生からのフィードバックなどを通じて、受講生が何を知りたいのかのニーズを拾って、改善を繰り返してきました、何社かとやらせていただいたのですが、そのときの教材がいまでも利用されているとこもあるようで、やった甲斐がありました。本はそれほど売れませんでしたが、2冊ほど出しました。

 最近では、昨年シェアした記憶がありますが、野原ホールディングスのCFOとして、従業員向けにマネープランニング・投資教育の教材づくりを始めました。おカネとどう付き合うは古くて新しいテーマですが、DC・iDeCo・NISAなど長くおカネと付き合うことでメリットが得られる制度が増えてきたので、これからおカネとどう向き合うのか、自分も含めて何かしらの気づきがあればよいなと思います。こちらは社内限定で熟成中ですが笑、どこかのタイミングでアウトプットできればよいですね。

 で、こうした教材づくりをするのは、自分が教えたいという教育者的な信念は全くなくて、教材づくりを通じて、自分にも学びが得られるというところが大きいと思います。かつて、幕末の蘭学者・医学者の緒方洪庵の設立した適塾は、新しい西洋学問を学びたい門下生が多すぎたため、直接、緒方洪庵が指導する時間がなくて、門下生が門下生を教えるというスタイルだったそうです。で、その門下生であった福沢先生はこのスタイルを「半教半学」に結実させました、これは教師・生徒関係なく、お互いに教えあい、学びあうことでお互いを高める、能動的に学習するという点で、いまでいうアクティブラーニングに近いのかもしれないですね。自分の理想も、教材づくりを通じて、自分が少しでも新しいことを学びたい、ここにスタートラインにあるように思います。

 まあ、教材というとややかしこまった感はありますが、自分のイメージとしては、たたき台、ディスカッションマテリアルに近いものだと思います。やはり、どんなことをやろうとしても、話しているだけでは空中戦になってしまって前に進みません、たたき台をたたいて、PDCAを繰り替えして、よい教材にする、今年というかこれからも続けていきたいと思いますので、皆様方におかれましては、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2022年 今年読んだよかった5冊

12月 29th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (2022年 今年読んだよかった5冊 はコメントを受け付けていません)

2018年から読書メーターで読んだ本を記録して、今年の5冊を紹介するのが習慣になっています。で、2022年は94冊でした、ここ5年間ほぼ同じペースです。たぶん、生活スタイルがあまり変わらないので、読むペースもあまり変わらないのだと思います。 

ただ、このスタイルは、変わらないようでも、最近は若干変わってきました、やはり、電子書籍ですね、ここ2年くらい読み放題のKindle Unlimitedを購読していて、最近はラインナップがかなり充実してきました。それでKindle経由は増えてきましたが、Kindle Unlimitedの場合、本を借りて返す図書館スタイルなので、電子なのに記憶が残らないというデメリットもあり、この辺は割り切りなのかもしれないです。 

その一方で、紙の本は減っていますよね、感覚的には本屋がどんどん減っている気がします。前は待ち合わせとかのとき、ちょっと早めについて本屋で立ち読みみたいなことが好きでしたが、いまはほとんどないですよね、まあ、スマホに置き換えられた感じでしょうか。それはそれで仕方ないかもしれないですが、最近はふらっと立ち読みがない分、偶然の出会いというか、面白い本を見つけるハードルもあがっている気がします、もしかしたら、紙でなくてデジタルでその努力をしたほうがよいかもです。そんな過渡期ではありますが、今年の5冊はこれです。

敗北からの芸人論 ― 知り合いの芸人を書くだけ、以上です。ただ、その目線が優しいです。それは、ダウンタウンには勝てない、相方であるノブシコブシ吉村には勝てない、というノブシコブシ徳井の「敗北」があるからこそ、優しくなれると思いました。

豪商の金融史 ― サブタイトルは「廣岡家文書から解き明かす金融イノベーション」、廣岡家は、朝ドラ「あさが来た」のモデルの廣岡浅子で、近年、江戸・明治時代の文書の解読が進みました。江戸時代、廣岡家は、中津藩に大名貸しをしていたそうですが、貸し倒れを防ぐべく事業計画の策定など今の企業再生コンサルのようなことをしていたようです。江戸時代というと近いように思えるけど、まだまだ解明されていないことがたくさんありますね。

危機の外交 ― コロナで惜しまれつつもお亡くなりになられた岡本行夫氏の自伝、海部政権の湾岸戦争での失敗、沖縄の基地移転問題など当事者目線で、そうだったのかと思わせることが多いです。

DIE WITH ZERO – 以前に紹介した本ですが、今年一番影響を受けました。おカネを貯めるだけではなくて体験に使う、アリとキリギリスの中間、ややキリギリス寄りの発想で、目から鱗でした。

複眼の映像 私と黒澤明 ― 著者の橋本氏は黒澤明の「羅生門」、「七人の侍」といった初期作品にシナリオライターとして参加。黒澤明というと世界的に有名な映画監督であるものの、何がスゴイかいままでイマイチわかりませんでした。で、これを読むと納得、初期作品は、ライター先行型で、複数のシナリオライターが同じ脚本を書いて、その中からよいものを採用するという機械学習でいうアンサンブル学習的なスタイル。そこから「いきなり決定稿」として、こうした共同の要素を排した結果、「影武者」、「乱」などストーリーに奥行がなくなってしまったと。だけど、ほぼ最後の「夢」では終わり良ければ総て良しで、黒澤明らしさが戻ると。

https://bookmeter.com/users/814464/bookcases/11778995

調光レンズというイノベーション

12月 14th, 2022 | Posted by admin in 日々の思い - (調光レンズというイノベーション はコメントを受け付けていません)

さて、もう5年以上前ですが、網膜剝離の手術のポストをしたと記憶しています。で、それ以来、とくに症状は変わりませんが、目のケアについては、注意しています。まあ、注意といっても、それほど多くはありませんが、お酒を飲みすぎない、目薬点眼を忘れない、紫外線に注意するといったところでしょうか。 

で、この紫外線対策の話、先日、ある方から調光レンズなるものの存在を教えていただき、早速、調光レンズ対応のサングラスを買ってみました。調光は、よくLEDで用いられる概念ですよね、LEDは、光の明るさを調整することができる機能で、リモコンで明るい、暗いとか3段階で調整することができます。 調光レンズもLEDに近くて、レンズに光を感知するコーティングがされていて、太陽光の度合いに応じて発色する仕組みのようです。なので、室内では普通のメガネですが、屋外だと、サングラスになり、紫外線を防ぐという仕組みで、メガネメーカーではなく、レンズメーカーのHOYAのプロダクトです。メガネのレンズというと、もう何十年も同じかと思いきや、こうした新しい製品も出ています。

 さて、これで思い出したのが先日観た映画「ダウントン・アビー 新しい時代へ」です、映画の場合、毎回テーマがあり、今回のテーマは、伯爵家を映画撮影のために利用するというもので、1920代は、ちょうど映画はセリフがないサイレントから音声付きのトーキーに変わりつつある時代でした。で、もともとサイレントで映画撮影をしていましたが、伯爵家長女メアリーの機転でトーキーに変える話がありました。 

企業の目的はイノベーションにあるというのは、ピーター・ドラッガーの金言ですが、やはり、同じ状態のまま留まるとサイレント映画のように時代の流れについていけなくなるような気がします、だからこそ、調光レンズのような新しいイノベーションが必要なのかと、もうちょっと使ってみたいと思います。

グーグルとの20年

11月 24th, 2022 | Posted by admin in 日々の思い - (グーグルとの20年 はコメントを受け付けていません)

 メタ、アマゾンにつづきグーグルもリストラ検討ということで、いろいろ思うところがありました。たしか、自分がはじめてグーグルを知ったのは大学の学生時代なので、もう20年以上前、当時は21世紀になるかならないか、そのあたりだったと思います。

 やや、昔話になってしまいますが、グーグル以前の検索は、いろいろあったのですが、自分は当時アルタビスタを使っていたように思います。ただ、アルタビスタ、それなりに便利だったのですが、検索ワードと検索結果のマッチがイマイチだったりで、その後、登場したグーグルの検索精度の衝撃は今でも憶えています。これはアカデミックの世界で、論文の引用度が多い論文は影響度が高いという事象をウェブ検索に応用したページランクというグーグルの最初のイノベーションですね。

 で、ページランクがグーグルの最初のイノベーションだとしたら、次のイノベーションは、こうした検索ワードをユーザの興味として捉えて、ユーザの興味のあるコンテンツを広告として表示する、アドワーズですね。たしか、2000年中ごろだったと思いますが、バナー広告はそれなりにありましたが、バナーではなく、検索ワードを広告に見立てて、グーグルはそれをビジネスとして大成功させました。そこから、グーグルをはじめとしてアマゾン、フェイスブック(Meta)、アップルのGAFAが世界の大部分のデータを握る覇者の存在になりました。

 さて、古代では永久に繁栄を続くと思われていたローマ帝国は滅び、近年では、米国のテレコム業界で圧倒的なパワーのあったAT&Tが分割されたように、やはり、グーグルならびにGAFAもかつての全盛期が過ぎ去りつつある、そんな風に思いました。

で、何がグーグルそしてGAFAをピークアウトに導いたのか?やはり、21世紀の石油であるデータのコストが上がったことではないでしょうか。 当たり前ですが、20年前は、データはタダでした。まあ、これは石油も同じですよね、19世紀後半、まだ石炭が全盛の時代、石油はいくつかの油井から汲み上げられたといいますが、基本はタダみたいなものだっといいます。それが、20世紀になって、自動車の燃料として石油が利用されると一気に競争は加速、規制もあり、米国では当時9割以上のシェアを持っていたスタンダードオイルは分割されました。

 データも最初は、履歴履歴・検索履歴、タダみたいなものでした。ただ、そのデータをタダで利用して、GAFAが独占的な地位を手に入れてから、プライバシーなどデータを取得するコストが上がったように思います、これまではスマホアプリは自由にデータを取得できましたが、今ではデータを提供できるかユーザが許可しないといなくなっています。

さて、今後、GAFAがどうなるのか自分にはわかりませんが、次のテクノロジーの萌芽もありますよね。いろいろとスキャンダルもありますが、トークンエコノミーはどちらかといえば、GAFAとは反対のユーザが自由になる世界のようにも思います。そして、世の中の動きにあわせて、適応する、これも大事ですよね。

統計・データ分析入門:実務上のポイントとコツ

10月 22nd, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (統計・データ分析入門:実務上のポイントとコツ はコメントを受け付けていません)

2023年1月27日 情報機構セミナー 統計・データ分析入門:実務上のポイントとコツ を実施します。

https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AD230112.php

リスキリングとOS

10月 9th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (リスキリングとOS はコメントを受け付けていません)

 先日、ある方と話していてなかなか面白い話だったのでシェアです。テーマはリスキリングです。政府もリスキリング支援に積極的で5年で1兆円も投資するそうですね。

 さて、このリスキリング、一般的には製造とか事務とかで長年働いてきた社員にDX系のスキルを学んで、スキルアップするという話と理解しています。で、自分の理解では、このリスキリングは、オペレーティングシステム(OS)とアプリの話と思っています。

 OSは、ウィンドウズとかiOSとかアンドロイドとかアプリケーション(ソフト)を動かす基盤ですよね。自分はウィンドウズを使ってますが、ウィンドウズもはるか昔のMS-DOSから始まり、Windows3.1、Windows95、Windows2000、Windows10と進化してきました。その昔は、OSがクラッシュするのは日常茶飯事でしたが、最近はかなり減りましたよね。それはやはり絶え間ないアップデートにあることは言うまでもありません。そして、そのOSの上で、オフィスだったり様々なアプリケーションを利用します。

 で、ザックリいうと、我々もOSみたいなものなのだと思います。それは、子供のころは義務教育で小学校、中学校、高校で学び、就職しても職場で学んだり、松下幸之助翁は、「学ぶ心さえされば、万物すべてこれわが師である」とも仰ってますね、いろいろなこと、いろいろな人からも学び、我々のOSをアップデートしていくのだと思います。我々がOSだとしたら、スキルはアプリのようなものではないでしょうか。

 このOSとアプリと我々とスキルの関係、プログラミング言語がわかりやすいのかもしれません。世の中には、C、Java、Python、PHPなどなど、様々なプログラミング言語があります。で、昔から思うのは、プログラミングができる人は、どの言語でもできるのですよね。「自分はPHPしかできない」というのはあまりなくて、若干の助走期間が必要ではありますが、プログラミングできる人は、だいたい、ほかの言語もすぐにキャッチアップします。OSとアプリの関係でいえば、OSがアップデートされているので、どんなアプリでも利用できると。

 閑話休題、このリスキリングという話、個々人の基礎力というべきでしょうか、このOSをどうアップデートするかにあるのではないでしょうか。そして、それは、読み書きそろばんのような基礎力もあるでしょうが、新しいものを吸収したい、知りたいという本人の意欲にもありそうです。

最強企業はどこで間違ったか?

9月 19th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (最強企業はどこで間違ったか? はコメントを受け付けていません)

 「GE帝国盛衰史 「最強企業」だった組織はどこで間違えたか」を読みました。タイトル通り、GEの本で、巨大企業の内情をかなり細部にわたって描いている力作です。そして、これはGEに限らず、企業はどこで間違えるか?について大いに示唆を与えてくれると思いました。

まず、この本を読むまでは、自分のなかでのGEの印象は、やはり、「最強企業」です、あらゆる分野に展開し、経営陣を育成するためにクロトンビルと呼ばれる企業研修所で徹底的に鍛えて、そして、トップのCEOは、何年にもかけて選考する、そうした会社が間違えることはしないだろうと。

 では、なぜ、この「最強企業」が間違えたのか?自分なりに解釈すると、まず、CEOの交代で、2001年、カリスマCEOであったジャック・ウェルチからジェフ・イメルトに交代。イメルトがCEOとして適任ではなかったというよりも、GEのCEOは伝統的に取締役会議長も兼任していて、CEOが絶対的な権力を持っていて、反対意見を許さない社風(p334)があったと。実際に、イメルトは、部下からの悪いニュースを聞くのを好まず、自分自身ならびに部下がたてた数値目標も達成できることを当然としたようです。

 もう一つは、コングロマリット、GEの事業は航空エンジン、ガスタービン、ヘルスケア、金融など多岐にわたります。そして、多岐にわたると、その事業で何が起きているのかわかりづらいです。実際、イメルトもCEOに就任した当時、GEキャピタルなどの事業構造がわからなかったそうです。で、わかりづらいならまだしも、各部門では高い利益目標を達成するために、経費の付け替え、他部門への移管などの利益の水増しが「経営のマジック」として認識されていたと。これは東芝と同じケースかもしれないですね。

やはり、コングロマリットで他部門が何をやっているかわからない、かつ、上からの業績のプレッシャーがきついので、自部門で利益を出すために水増しをする。とくに、GEの場合、株価・配当の維持は至上命題であり、現場では良かれと思ったことが、結果的には間違った選択になったのかもしれないです。取締役会の機能不全、コングロマリット、いずれも共通するのは反対意見を許さない社風ではないでしょうか、間違った方向に進んでいても、それを反対、止める動きがやはり必要ですよね。

 実際のところ、GEは倒産したわけではなく、いまでも上場をしていますが、かつての勢いはありません。とはいえ、どんな優位なポジションにあっても、どんな規模が大きくても、企業が崩壊するのはあっという間の気がします。だからこそ、間違えないように、反対意見を受け入れる、これも大事と思いました。

豪商の金融史 廣岡家文書から解き明かす金融イノベーション

9月 11th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (豪商の金融史 廣岡家文書から解き明かす金融イノベーション はコメントを受け付けていません)

 「豪商の金融史 廣岡家文書から解き明かす金融イノベーション」を読みました。廣岡家といってもピンとこないかもしれないですが、7年前の朝ドラ「あさが来た」のモデルの廣岡家といえば、朝ドラファンであれば、少しはピンとくるのではないでしょうか。自分はあの朝ドラ好きでした。

 で、なぜ、廣岡家なのか、廣岡家の拠点である大阪も太平洋戦争の空襲でかなりの文書が焼かれてしまったそうですが、一部の文書等を奈良に疎開させ、それが廣岡家文書として寄贈されることになり、廣岡家の江戸・明治の商環境の解明が進んできたと、歴史のロマンですよね。

 さて、金融イノベーションという点では、江戸時代では、「コメ」を金融商品として扱ったことがイノベーションと言えそうです。大名は、それぞれの領地から収穫したコメを大阪堂島の蔵屋敷に搬入します。一方で、大名は、参勤交代の費用など「おカネ」も必要なので、「コメ」を「おカネ」に変換するか、17世紀後半から18世紀初めくらいまでは、米切手という1枚につき米10石を交換する証券を発行していましたが、相対取引のため価格決めが恣意的に決まってしまうという点で、米商人が生み出したのが名目(指数)、現物のやり取りをせず、指数だけを売買する世界最初と呼ばれる先物取引がスタートしました。

 廣岡家も江戸時代には米仲買人として米商いを手掛けながら、蔵元として、大名との関係を築き、大名に対して米切手を用いた資金繰りをサポートする大名貸しにも進出します、ただ、大名は平気で借金を踏み倒すこともあったらしく、ほかの商人との合同によるシンジゲートローン、さらには大名の財政状態を把握しながら、必要な融資を実行するなどコンサルっぽいこともしていたようです。

 廣岡家は、江戸時代から現在まで続いていますが、そのなかで、激震が何度かあったようで、まずは明治維新ですね、朝ドラでも新選組が登場するシーンがありましたが、これまでの大名貸しから維新政府との関係構築、加島銀行・大同生命の設立が大きなターニングポイントだったようです。で、次が、昭和恐慌、朝ドラでは、新次郎さんがお亡くなりになったところで終わってしまいましたが、本当の激震は昭和恐慌だったようです。昭和恐慌は、我々の想像もつかないくらいヒドイ状況だったようで、加島銀行も融資先が焦げ付き、破綻、比較的傷が浅かった大同生命が生き残り今にいたると。というわけで、 まあ、事実は小説よりも奇なりというのでしょうか、廣岡家の歴史は朝ドラ以上に波乱に満ちていたようです。

新刊 「Web3とメタバースがよ~くわかる本」

8月 7th, 2022 | Posted by admin in 長橋のつぶやき - (新刊 「Web3とメタバースがよ~くわかる本」 はコメントを受け付けていません)

さて、よく本を書くね、とたまに言われますが、今年も新しい本が出版されました、8月10日発売「Web3とメタバースがよ~くわかる本」です、電子書籍も含めると13冊目のようです。これまで取り上げたフィンテック、量子コンピュータ、機械学習、D2Cも苦難の連続でしたが、今回はそれ以上にシンドイ道程でした。

 まず、最初はメタバースを書こうと思っていて、自分の注力分野はビジネスモデルなこともあり、メタバースのビジネスモデルであるヒト、モノ、カネに注目していました。で、このとくにカネの部分、どんな方向性かというと、どこまでいってもロブロックスのRobuxなど独自通貨(クローズ)にならざるを得ないのですよね。そこから、いろいろ探索しているうちに、トークンエコノミーがこの独自通貨の壁を打ち破るブレークスルーと思いました。そして、それがもう一つのタイトルのWeb3であり、タイトル変更、一冊の本に2つのトピックとやや異例の内容です。この変更を呑んで頂いた出版社の皆様ありがとうございました。

 さて、Web3さらにはNFT、いろいろ毀誉褒貶あるようですが、自分は比較的ポジティブにとらえています。なんていうか、25年以上前のインターネット黎明期に似ている気がします、当時は「インターネットとFAX、何が違うんだ?」とか「インターネットに信頼性はない、ISDNの方がよっぽど優れている」とか言われていましたが、今や、ですよね。で、Web3と一括りにいろいろありますが、たとえば、ブロックチェーンのスケーラビリティを拡張するようなセカンドレイヤー・プラズマの技術とか、トークンエコノミーのインフラも着々と整いつつあるように思います。

 以前、本を書くのはマラソンだと書いた記憶がありますが、今回は、メタバースというフルマラソンのゴールの先に、さらに、Web3というフルマラソン以上を追加したウルトラマラソン(100km)を走った気持ちです汗 実際のウルトラマラソンはこれまで2度走りましたが、あまりの過酷さに現在は休止中です笑 走っている最中はもう二度と走りたくないと思っていますが、また、完走後、エントリーしてしまうのが、ランナーの悲しい性でもあります。